アプリケーションノート1198

市販のトランスによるコンデンサ突入電流制限回路

Jun 22, 1998

コンデンサ充電の高電圧エネルギは、放射線センサ、パルスレーザ、電子ビーム発生装置、自動車のダイレクト燃料インジェクションシステムなど、多方面に利用されています。自動車用インジェクションシステムは、燃料インジェクタによってコンデンサを放電させて燃料を車の燃焼室に噴射するものです。これには高速かつ精密な制御が必要ですが、標準の低コストトランスを利用することができます。

エンジンサイクルの各段階で、コンデンサへの高速再充電が必要です。この際、制御方式を工夫し、ノイズや電圧トランジェントが電気系統に入らないようにしなければなりません。また回路部品の選択も重要となりますが、充電波形の制御によって部品のコスト/性能比の調整も可能となります。

安価な市販の6巻線のトランス(図1)を使うと、帰還回路や制御回路を追加することなく、また従来の突入電流リミッタにありがちな効率のロスを伴うことなく、コンデンサへの突入電流を制限することができます。T1のオートトランスは1次側(VINとMOSFETのドレイン間)に並列で3巻線、および2次側(VINとD2間)に直列で3巻線から構成されています。巻線比は1:4です。

図1. ブーストコンバータ中にオートトランスを設け、放電コンデンサへの突入電流を減ずる回路。小容量コンデンサが使用でき、MOSFETの電圧定格の低減が可能。
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図1. ブーストコンバータ中にオートトランスを設け、放電コンデンサへの突入電流を減ずる回路。小容量コンデンサが使用でき、MOSFETの電圧定格の低減が可能。

ステップアップDC-DCコントローラ(IC1)へのフィードバックによってコンデンサ電圧の低下が検出されると、コントローラがMOSFETをオンとし、トランス1次側に電流が流れ、トランス鉄心に磁束が発生します。そしてFET電流が電流検出抵抗(R3)で設定したスレッショルドの3.3Aに達すると、IC1はMOSFETをオフとし電流がストップします。

レンツの法則の原理により、トランスには磁束の瞬時変化を妨げるような誘起電圧が発生し、この電圧によって出力ダイオードを通って電流が流れます。この時トランスの2 次側に流れる電流は、ISEC = IPRI/N = 3.3A/4 = 0.83Aとなります。このようにトランスを使用すると、出力ダイオードから放電用コンデンサに流れる最大瞬間電流を75%にまで低減できます。また、MOSFETドレイン電圧の最大値も75%に抑えられます。

2次側巻線の瞬時電流が75%に減ることにより、コンデンサへの充電電流流入が制限され、最大出力電流の平均値も比例して下がります。その結果、蓄積していく充電電流が、ほどよく制御されます(図2)。ESRが少し高いコンデンサでも問題がなければ、30µFのポリエステルフィルムコンデンサを使用すると、サイズ、コストをともに低減できます。この回路ではMOSFETのドレイン電圧を下げることが可能となりますので、RDS(ON)の低い低コスト60V MOSFETが使用でき、効率も良くなります。

図2. 瞬時一次電流を25%に抑えるため、出力電流ピークを制限。図1のオートトランスによりコンデンサ突入電流を制限し、蓄積充電電流を適切な値に制御。
図2. 瞬時一次電流を25%に抑えるため、出力電流ピークを制限。図1のオートトランスによりコンデンサ突入電流を制限し、蓄積充電電流を適切な値に制御。

同様のアイデアがElectronic Designの6/22/98号に掲載されました。



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