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アプリケーションノート 148

高信頼性長距離配線1-Wire®ネットワークのガイドライン

要約:1-Wireプロトコルは当初、短距離接続で近接デバイスと通信するために設計されました。また、1-Wireは単一マイクロプロセッサポートピンに補助メモリを増設するための方法でもありました。その後、基板のサイズを大幅に超えるネットワークアプリケーションにまで1-Wireプロトコルを拡張するための手法が開発されました。この文書では1-Wireネットワークの様々な側面について検討し、信頼性の高い動作を実現するための設計ガイドラインを提示します。付録では、1-Wireバスインタフェースの微調整について取り上げ、様々な状況における1-Wire通信の波形を示します。

はじめに

1-Wireプロトコルは当初、単一マイクロプロセッサポートピンに補助メモリを増設する場合のように、短距離接続で近接デバイスと通信するために設計されました。1-Wireデバイスの使用が増加するにつれて、基板のサイズを大幅に超えるネットワークアプリケーションにまで1-Wireプロトコルを拡張するための手法が開発されました。1-Wireネットワークは、1-Wireデバイス、通信線、および接続の複雑な組合せです。個々の1-Wireネットワークが、多くの場合トポロジ(レイアウト)とハードウェアの両面で、それぞれ異なっています。

ネットワークコンポーネント(すなわち、マスタ、ネットワークケーブル、および1-Wireスレーブデバイス、「スレーブ」)間の適切な整合が、信頼性の高い1-Wire動作の前提条件です。バスマスタの設計または実装が不適切な場合、あるいは短距離配線用のマスタを大幅に延長された通信線で無理に使用した場合は、常に満足すべき性能を期待することはできなくなります。

このアプリケーションノートでは、様々な形態、サイズ、およびデバイス数の1-Wireネットワークについて動作の特徴を明らかにするプロジェクトの結果を示します。また、信頼性の高い動作を実現するための実用的パラメータも提示します。ここで検討する側面の中には、短距離配線アプリケーション、たとえば1m未満のネットワークでは重要ではないものも含まれています。組込み1-Wireアプリケーションについては、アプリケーションノート4206 「組込みアプリケーション用の正しい1-Wireマスタの選択」を参照してください。付録A~Dでは、1-Wireバスインタフェースの微調整について取り上げ、様々な状況における1-Wire通信の波形を示します。

ネットワークの説明

この文書の対象範囲は、Category 5ツイストペア銅線を使用し、マスタ供給の5Vバス電力を備える1-Wireネットワークに限定されています(ほとんどの1-Wireスレーブはこれより低いバス電圧で動作しますが、大規模なネットワークほど損失が増大するため、低電圧状況下では十分な性能が得られない場合が多くなります)。

この文書では、EPROMタイプのスレーブデバイスのプログラミングについての要件は取り上げません。一般に、マスタ端インタフェースから距離を隔ててEPROMのプログラミングを行うことは推奨されません。また、この記事では1-Wireデバイスのオーバドライブ速度の動作についても検討しません。オーバドライブ速度は非常に短距離の接続での使用のみを意図したものであり、1-Wire接続ネットワークでの使用には適しません。

1-Wireデバイスで使用可能なワイヤの種類およびトポロジには無数の組合せが存在します。このアプリケーションノートでは、1-Wireネットワークに関係する最も一般的で標準的なアプリケーションについてのみ説明します。制約を超えて1-Wireネットワークを稼働させたり、この文書のアドバイスを無視した場合、ネットワーク性能の信頼性が低下する原因になる可能性があります。

1-Wireネットワークの用語

半径と荷重という簡単な2つの用語で、1-Wireのネットワーク性能にとって非常に重要な数値が表されます。
  • ネットワークの半径とは、マスタ端から最も遠いスレーブまでのワイヤ距離です。単位はmです。
  • ネットワークの荷重とは、ネットワークに接続されているワイヤの総量です。これも単位はmです。
たとえば、10m、20m、および30mの3本の支線を持つスター型ネットワーク構成の場合、半径が30m (= 1-Wireマスタから最も遠いスレーブまでの距離)、荷重が60m (= ネットワーク内のワイヤの合計長、10m + 20m + 30m)になります。

一般に、ネットワークの荷重によってケーブルの立上り時間が制限され、半径によって最も遅い信号反射のタイミングが確定されます。

スレーブデバイスの荷重

ネットワークでサポート可能な荷重は限られており、ドライバ(1-Wireマスタインタフェース)によって決まります。単純に表現すれば、その荷重を非常に少量のケーブルで接続された多数のスレーブで構成することも、また大量のケーブルで接続された非常に少数のスレーブで構成することも可能です。

スレーブデバイス(iButton®およびその他の1-Wireデバイス)は、等価荷重をネットワークに付加します。個々のデバイスが短いワイヤと同じような荷重を付加するため、等価なワイヤ荷重という形でデバイスを評価することができます。したがって、ネットワークを設計する際には、デバイスの荷重を考慮する必要があります。iButton型のスレーブは、通常は半田付け部品としてパッケージ化されたスレーブよりも多くの荷重を付与します。iButtonは約1mの荷重を付加し、iButton以外のスレーブは約0.5mの荷重を付加します。これが意味することを、ネットワークの具体例で考えてみましょう。100個のiButtonデバイスを接続した場合、ネットワーク荷重の合計が100m増大するため、ネットワークの機能を維持するためにはワイヤの量を100m削減する必要があります。

基板配線、コネクタ、およびESD保護デバイスも、ネットワークに荷重を付加します。

荷重は多数の要素から影響を受けますが、単一の誘因として最大のものは明らかに電気容量です。原則的に、ESD回路およびプリント基板配線に起因する荷重とそれらの電気容量との関係は、約24pF/mという係数によって表すことが可能です。1-Wireバスに対して24pFを示す基板配線またはデバイスの場合、約0.5mの荷重が付加されます。

1-Wireネットワークのトポロジ

1-Wireネットワークは、多くの場合まったく「自由形式」の構造ですが、通常は1-Wireスレーブの分布および相互接続ワイヤの構成に基づいて、いくつかの一般化された分類に該当します。

  1. リニア型トポロジ。1-Wireバスは、マスタを起点として最も遠いスレーブデバイスまで延びる単一のペアです。他のスレーブは、目立った(3mを超える)支線あるいは「スタブ」なしで1-Wireバスに接続されます。



  2. スタブ付きトポロジ。1-Wireバスは、マスタを起点として最も遠いスレーブまで延びる単一の幹線です。他のスレーブは、長さ3m以上の支線あるいはスタブを通して幹線に接続されます。



  3. スター型トポロジ。1-Wireバスがマスタ端またはその近傍で分割され、長さの異なる複数の支線の形で延びています。支線に沿って(または支線の末端に)スレーブデバイスが存在します。



異なるトポロジが混在する場合は、ネットワークの実際の制約を判断するのが大幅に難しくなります。それらの場合、設計者は原則として最も控えめな基準を適用する必要があります。

スター型トポロジの注意事項

テストの結果、高い信頼性の実現が最も難しいのは非スイッチ接続スター型ネットワークトポロジ(すなわち、いくつかの支線がマスタから分岐しているもの)であることが明らかになっています。様々な支線の接合部で、著しいインピーダンスの不整合が生じます。1つの支線の端からの反射がほぼネットワークの荷重(半径ではなく)に相当する距離を伝搬してデータエラーの原因となる可能性があります。こうした理由から非スイッチ接続スター型トポロジは推奨されず、その性能について保証することはできません。

スイッチ接続ネットワーク

荷重と半径を増大させることなくネットワークの複雑度を増大させることを可能とするため、ネットワークをセクションに分割して、1度に1つを電子的にオンに切り替えるという方法が用いられます。ローインピーダンスの単一電源アナログスイッチを使用して、物理的にあるトポロジに似ているネットワークを、電気的には別のトポロジに似せることが可能です。すなわち、各支線にスイッチを備えたスター型構成では、個々の支線は実際にはリニア型トポロジに似ています。この場合、常に1つの支線のみがアクティブになります。



上の例は、半径150m、荷重450mのスター型トポロジのネットワークのように見えます。しかし、スイッチ切替えの各経路を個別に考えた場合、このネットワークは実はリニア型トポロジであり、荷重は150mに過ぎません。

原則として、非スイッチ接続ネットワークについての議論は、スイッチ接続ネットワークの個々のセグメントにも適用することができます。

1-Wireネットワークの制約

いくつかの要因によって、ネットワークの最大の半径および荷重が決まります。それらの要因の中には、制御可能なものと不可能なものがあります。

マスタ端インタフェースは、1-Wireネットワークの許容サイズに大きな影響を与えます。このインタフェースは、ケーブルとスレーブの荷重を克服するための十分な駆動電流を供給する必要があります。また、仕様の範囲内のタイミングを備え、ネットワークの充電および放電時間に合わせて最適化された1-Wire波形を生成する必要があります。最後に、このインタフェースはネットワークに適したインピーダンス整合を提供して、信号がラインに反射して他のネットワークスレーブに干渉するのを防ぐ必要があります。

ネットワークが小規模の場合は、非常に単純なマスタ端インタフェースで問題ありません。電気容量は小さく、反射エネルギーの到着が早いために問題が発生せず、ケーブル損失も最小限です。単純なアクティブ(FET)プルダウンとパッシブ(抵抗)プルアップで十分です。しかし、ラインが長くなり、より多くのデバイスが接続されると、複雑な力が作用し始めます。マスタ端インタフェースはそれらすべてに対処することができる必要があります。

ネットワークの半径は、波形の反射タイミング、ケーブルによって生じる遅延、ケーブルの抵抗、信号レベルの低下など、いくつかの要因によって制限されます。電話線中での標準的な信号伝播速度は、光速の約2/3です。たとえば750mのケーブルでは、ラウンドトリップ遅延は7.5µsになります。マスタが7.5µsの間ラインをローに駆動して読取りタイムスロットを開始した場合、マスタのローパルスの末尾(すなわちラウンドトリップ終了後)と、近端の高速なスレーブがラインのロー駆動を終了する瞬間とが一致します。その結果、そうした長いケーブルのラウンドトリップ遅延によって、マスタとその近端のスレーブとの通信は不可能になります。

ネットワークの荷重は、1-Wireプロトコルを満たす十分な速度で充電および放電を行うケーブルの能力によって制限されます。単純な抵抗プルアップの荷重の限界は約200mです。高度な1-Wireマスタの設計では、ロジック制御の下でより大きな電流を供給するアクティブプルアップを使用することによってこの制限を克服しており、サポート可能な最大荷重が500m以上に拡張されています。アプリケーションノート244 「高度1-Wireネットワークドライバ」をご覧ください。

寄生電源の問題

1-Wireの波形は、通信に十分であるだけではなく、スレーブへの動作電力の供給も行う必要があります。各スレーブは、バス上の電圧が内部のエネルギー貯蔵コンデンサの電圧より高い場合、バスから電力を「盗み」ます。ネットワークの荷重が過大になると、マスタによって供給される電流がスレーブの動作電圧の維持に十分ではなくなる可能性があります。

寄生電力に関するワーストケースのシナリオは、マスタが非常に長い0ビットのシーケンスを発行する場合です。この状況が発生すると、ラインは大部分の時間をローの状態で過ごすことになり、スレーブの再充電を行う機会がほとんどなくなります。ビット間のリカバリ時間でバスが十分な電圧に達して、リカバリ時間が十分に長い場合は、問題はありません。各デバイスの内部動作電圧の低下にともなって、バスを0ビットに駆動するスレーブの能力が低下して、スレーブのタイミングが変化します。最後には、寄生電圧が臨界レベルを下回った時点で、スレーブがリセット状態に入って応答を停止します。そして、スレーブが再び十分な動作電圧を受け取ったときに、プレゼンスパルスを発行して、それによって他のバス活動を妨害する可能性があります。ネットワークにスレーブの動作電力を維持するだけの十分なエネルギーがない場合、データに依存する間欠的な障害が発生することになります。

分散型インピーダンスマッチング

1-Wireバス設計の強みは、ミニマリズムと単純性です(究極的には、低コストにもつながります)。スレーブ自体の他には、ネットワークに分散するコンポーネントの使用は常に避けられてきました。

1-Wireバスにスタブを接続した場合、分岐点でインピーダンスの不整合が発生します。スタブの長さを信号が伝わるのにかかる時間だけ遅延して、スタブの端からの反射が幹線に戻ります。そしてこれらの反射が、ネットワーク上の他のスレーブにとって問題の原因となる可能性があります。スタブと直列に抵抗を挿入することで、不整合のひどさおよび反射されるエネルギーの大きさを低減することができます。その抵抗によって、スタブが生成する幹線への反射による悪影響が軽減されます。



このコンセプトを最も有効に実装する方法としては、スタブが幹線に接続される各ポイントに150Ωの抵抗を使用します。この抵抗値によって接続点における不整合が約20%減少し、結果として生じるスタブの反射が約40%減衰されます。しかし、抵抗値の追加によってノイズ耐性も約80%低下するため、注意が必要です。また、テストの結果100Ωの抵抗値を使用しても良好な性能が得られ、ノイズ耐性もそれほど大きく損なわれないことが分かっています。

:シリアル1-WireラインドライバDS2480B、USB/1-WireブリッジDS2490、およびDS2482デバイスファミリはアクティブプルアップを備えた1-Wireマスタであり、この抵抗を追加することによって悪影響を受けます。上記の手法は、これらの1-Wireドライバとは互換性がありません。これまでに分散抵抗方式の適用に成功した例はすべて、データ入力スレッショルドを高めた独自のマスタ端ドライバを使用しています。

マスタ端インタフェースデバイス

1-Wireネットワークとマイクロコントローラおよびパーソナルコンピュータとのインタフェースには、様々な手法が存在します。さらに、個々の1-Wireマスタがそれぞれ異なる使用目的のために設計されており、別のサービスに流用した場合も常に高い信頼性が得られるとは限りません。最後に、1-Wireネットワーク設計の制約を判定する上で、マスタ端のハードウェアが非常に重要な要素になります。短距離配線および近接したiButtonプローブ用の簡単なハードウェアインタフェースは、より大きなネットワークや複雑な配線方式に接続した場合うまく動作しません。非常に長いライン向けの高度なドライバを短距離および中距離ネットワークで使用した場合も、満足な性能が得られない可能性があります。

現在、最も一般的に使用されているマスタ端ハードウェアインタフェースは、次の通りです。
  1. マイクロプロセッサポートピン接続
  2. 1-Wireマスタを内蔵したマイクロコントローラ
  3. シンセサイザブル1-Wireバスマスタ(DS1WM)
  4. シリアルインタフェースプロトコル変換(DS2480B、DS2482-100、DS2482-800、DS2490)
これらのインタフェースについては、前述のアプリケーションノート4206で解説しています。

長距離配線アプリケーションの場合は、変更を加える必要があります。付録Aに、スルーレート制御付きのFETドライバおよび1kΩのプルアップ抵抗を使用した、マイクロプロセッサポートピン接続のバリエーションを示します。このインタフェースを使用することによって、最大200mまでの半径および最大200mまでの荷重を高い信頼性でサポート可能になります。

DS2480Bは、短~中距離配線での効率的な動作を目的に設計されています。DS2480Bとネットワークの間に簡単なR-C回路を挿入することで、中距離ネットワークの性能および信頼性が大幅に向上します(付録B参照)。フィルタを使用することで、このマスタは最大200mの半径または荷重を持つネットワークを高い信頼性でサポートすることができます。重要な考慮事項として、DS2480Bインタフェースデバイスは可変タイミングを備えており、これも1-Wireネットワークの信頼性と性能の向上に利用することができます。一部のソフトウェア(Windows®用1-Wire Driversなど)はこれらのタイミングを最適値に設定しますが、すべてのソフトウェアが調整を行うとは限りません。(付録Cおよびアプリケーションノート4104 「DS2480Bの1-Wireタイミングの理解と設定」を参照)

長距離配線アプリケーションの場合の推奨回路は、上記のアプリケーションノート244で解説しているように、高度なバスインタフェースを備えたマイクロコントローラです。このマスタ端インタフェース回路では、インピーダンスマッチング(ハイおよびロードライバの両方)および「インテリジェント」(ソフトウェア制御による)アクティブプルアップを使用します。プルアップは、1-Wireプロトコルに基づいてバスがハイレベルであるべきと判断されるとき、およびバスをサンプリングした結果ハイレベルであった後の読取り期間中、常にオンになります。このインタフェースは大規模または小規模いずれの1-Wireネットワークでも同様に良好な動作を示し、最大500mという大きな荷重および半径の値を持つネットワークを高い信頼性で稼働させることができます。

高信頼性1-Wireネットワークの要件とは?

1-Wireネットワークで障害が発生すると、多くの場合、検索アルゴリズムが実行されたときにデバイスの奇妙な「喪失」として表れます。詳細については、アプリケーションノート187 「1-Wire検索アルゴリズム」を参照してください。物理的には存在するデバイスが、検索結果に表れたり消えたりします。場合によっては、ネットワークやデバイスに関する一見わずかな変更によって、デバイス検索の結果が激変することもあります。なぜこうしたことが生じるのでしょうか?

1-Wireバス上で発生するすべての活動の中で、デバイス検索が最も複雑であり、バスに問題がある場合最も実行が困難になります。検索は、(プレゼンスパルスを除いては)すべてのスレーブが同時にバスをローに駆動する可能性がある唯一の時間です。したがって、検索中のバスの状態は、選択された単一のスレーブとの通常の通信時とは大きく異なります。多数のスレーブの中に、エッジを見逃したりパルスの識別に失敗したものがあった場合、検索アルゴリズムとの同期が失われ、その後に続く検索のビットでエラーが発生します。すなわち、バスの問題によって波形の立上りでグリッチが発生した場合、波形が有効なローのレベルに達しなかった場合、または検索中にいずれかのデバイスの電力が不足した場合に、検索が失敗することになります。ほとんどの検索アルゴリズムは、検索が失敗した場合に検索アルゴリズムを終了して最初からやり直すことで対処するようになっています。その時点で発見されないデバイスは、検索から脱落したように見えることになります。エラーが発生したのは1つのスレーブデバイスの1つのビットであるという事実にもかかわらず、多数のスレーブが影響を受ける可能性があります。

検索アルゴリズムは、一般的にデバイスの喪失はノイズによるものと想定します。タッチ接続式のiButtonを含んだネットワークでは、新しいiButtonがネットワークに追加された場合、新たに参加したデバイスからのプレゼンスパルスという形で瞬間的な短絡が生じることがあります。これらのイベントのタイミングによっては、それらのプレゼンスパルスが検索操作と干渉することになります。検索アルゴリズムはそうした問題に対処するため、「デバウンス」期間中にデバイスが見つからなかった場合にのみ、発見済みスレーブのリストからスレーブを取り除きます。

検索が失敗する原因は多岐にわたります。最も一般的なものとして、寄生電力の枯渇(大半径、大荷重ネットワークの場合)、波形エッジに対する反射(小~中半径、軽荷重ネットワークの場合)、および波形の立下りエッジのリンギングに起因するDS2480B/DS2490ベースのインタフェースにおけるアクティブプルアップの誤作動があります。イネーブルされている場合、DS2482のアクティブプルアップも誤作動する可能性があります。

検索の失敗は、多くの場合、ネットワーク内のわずかな変化、ネットワークに接続されているスレーブ、あるいはフラストレーションが溜まった設計者が口にしたという「月の相」などに、非常に敏感であるように思われます。この敏感さは、調査対象のネットワークがボーダーライン状態であり、非常に小さなネットワークの変動によって検索が成功したり失敗したりするのが原因です。簡単に言うと、検索アルゴリズム中ですべてのデバイスが高い信頼性で発見されるため良好に動作しているように見えるネットワークが、実際には障害寸前という可能性があります。わずかな劣化によって、表面上破滅的な障害が突然発生することになります(たった1ビットの誤りで、検索が停止してデバイスが消失します)。したがって、ユーザは公表されている仕様およびガイドラインを遵守して、ケーブル、デバイス、および接続のバリエーションに対する十分な安全マージンと許容度を備えた高信頼性ネットワークを保証することが非常に重要です。

高い信頼性と一貫性を持って検索を実行するネットワークは、一般に他の1-Wireの機能も高い信頼性を持って実行することができます。

不適切な1-Wireのタイミング

ソフトウェア(ファームウェア)を使用して1-Wireの波形を生成する場合(波形の「ビットバンギング」とも呼ばれます)、すぐには表面化しない誤りを犯しがちです。

1-Wireマスタのプログラミングにおいて群を抜いて最も一般的な失敗は、タイムスロットの先頭(立下り)エッジの後、スレーブからのデータをサンプリングするまでの時間が長すぎるというものです。スレーブのタイミングは、温度や電圧が変化しただけで大幅に変動します。また、プロセスの変動に起因するバッチごとの変化もあります。30µsで波形のサンプリングを行うように設計した場合、実験室のテストに合格して量産にまで進む可能性があり、不適切なタイミングを持つ製品が出荷されることになります。その後、バッチの切替えやネットワーク状況の変化によってスレーブが32µsから29µsに移動すると、このマスタ端インタフェースは障害を起こします。したがって、実験室環境で一見完璧なシステム動作を示した場合でも、波形のパラメータを仕様に照らして検証することが非常に重要です。

結論

すべての電子コンポーネントと同様、サポート用電子システムも高信頼性動作を保証するためにあらゆる使用条件下でデバイスの仕様に適合する必要があります。信頼性の高い1-Wire動作のためには、ネットワークコンポーネント(マスタ、ネットワーク配線、および1-Wireスレーブ)間の適切な整合が不可欠です。

付録A. 改良型CPUバスインタフェース



付録B. 短~中距離ネットワークでDS2480BインタフェースをサポートするR-Cフィルタ



この単純なR-Cフィルタによって、最大荷重200mの中距離配線におけるDS2480Bの動作が改善されます。DS2480Bベースのマスタ端インタフェースを使用する場合、10m~100mの範囲のネットワークではこのフィルタを使用してください。4700pFのコンデンサは100mの荷重と等価であり、DS2480Bにとって大きな負荷であることに注意してください。ネットワーク内の他のコンポーネントの荷重によっては、コンデンサを470pFに減少させる必要があるかも知れません。また、ここではDS2480BをシリアルアダプタDS9097Uの内部で使用していますが、組込みデバイスとしての使用も可能であることに注意してください。

付録C. DS2480Bタイミングの最適化

シリアル/1-WireコンバータDS2480Bは、小規模ネットワーク向けに最適化されたデフォルトの1-Wireタイミングを備えています。これらの設定は、中規模または大規模のネットワークでも常に良好な動作を示すとは限りません。

DS2480Bのタイミングおよびスルーレートの設定は、ソフトウェアの制御下で調整することができます。実際に、Windows用1-Wire Driversをこのインタフェースで使用した場合、事実上これらの値が調整されます。プログラマは、DS2480Bインタフェースが常に「フレックスモード」になっていること、および信頼性の高い動作が得られるようにタイミングの値が調整されていることを意識してください(フレックスモードの設定の詳細については、DS2480Bのデータシートを参照してください)。

DS2480Bで調整可能な設定には、以下が含まれます。

  • プルダウンスルーレート制御
    バスがハイからローレベルに駆動される速度です。過度に速い立下り時間(高スルーレート)はリンギングの原因になり、有効なデータの波形と干渉します。過度に遅い立上りおよび立下り時間はタイミング要件に適合せず、遷移期間をノイズと反射の影響下に晒す可能性があります。
  • Write-Oneロータイム
    各タイムスロットの先頭を示すロー遷移パルスの長さです。このパルスが狭すぎる場合、パルスの終了までに長距離配線のマスタ端が有効なローレベルに到達しない可能性があります。
  • データサンプルのオフセット/リカバリ時間
    このパラメータによって、スレーブからのデータをいつサンプリングするかが定義されます。このパラメータが小さすぎる場合、サンプリングまでにラインが有効なハイレベルに達するための時間が不足する可能性があります。この時間が長すぎる場合、範囲の高速端近くで動作しているスレーブでは読取りの誤りが発生する可能性があります。また、このパラメータによってビット間の時間も定義されます。この時間の間に、スレーブの寄生コンデンサが再充電される必要があります。
長距離バス配線と短距離バス配線によるテストの結果、すべてのネットワークに対して最適なタイミングは次の通りであることが分かりました。

  • プルダウンスルーレート:1.37V/µs
  • Write Oneロータイム:11µs
  • データサンプルのオフセット/リカバリ時間:10µs
これらのタイミングによって、可能な限り最も遅いサンプリング時間(21µs*)および可能な限り最も長いリカバリ時間(10µs) が、適切に制御されたスルーレートとともに提供されます。アプリケーションノート4104によると、これよりわずかに早いタイミングであるWrite-Oneロータイムが8µs、データサンプルのオフセット/リカバリ時間が9µsという代案も考慮に値します。これらの値によって、15µs~54µsの速度範囲の1-Wireスレーブに対応することが可能になるためです。

*これらのタイミングは、プルアップ電圧が4.5V~5.5Vのネットワークにのみ該当します。

付録D. 波形例

以下のオシロスコープ画像は、様々な状況における各種1-Wireネットワーク波形を図示しています。これらの波形および作用の詳細な説明については、テキストと参照資料を参照してください。



この画像は、バスリセットおよびプレゼンス検出シーケンスを示しています。さらに重要な点として、スルーレート制御されたエッジ(マスタ)とスルーレート制御のないエッジ(スレーブ)の違いを示しています。マスタにより生成される立下りエッジはきれいで、アンダシュートやリンギングがありません。スレーブデバイスにより生成される立下りエッジは、バス上にリンギングとアンダシュートを引き起こします。



この画像も、バスリセット/プレゼンス検出シーケンスを示しています。マスタが480µs間バスをローに駆動して、バス上のすべてのデバイスがこれをリセット動作として認識します。スレーブはバスリセットに対する応答としてプレゼンスパルスを発行します。複数のスレーブが同一期間にプレゼンスパルスを生成して、それらのパルスがオーバラップして単一のパルスを形成します(タイムベースが1ディビジョン当り200µsであることに注意してください)。



この画像は、Read OneタイムスロットまたはWrite Oneタイムスロットを示しています。マスタは約10µs間バスをローに駆動した後、バスを解放します。スルーレート制御された立下り時間に注意してください。タイムスロットは約70µs間持続し、その後、次のタイムスロットが発生します。タイムベースが1ディビジョン当り10µsに変更されていることに注意してください。



この画像は、Write Zeroタイムスロットを示しています。マスタは60µs間バスをローに駆動した後、次のタイムスロットの開始前に、約10µs間バスを解放します。



この画像は、Read Zeroタイムスロットを示しています。マスタは、約10µs間バスをローに駆動した後、バスを解放します。しかし、スレーブはそれより長い時間バスをローに保持することによって0ビットを返します。スレーブのタイムベースには、15µs~60µsの範囲の幅があります。



この画像は、抵抗プルアップのみでマスタを使用する場合の過度な荷重の作用を示しています。この例のネットワーク範囲は300mであり、ネットワーク遠端に30台のデバイスが存在しています。ネットワーク終端からの反射と、非常に遅い立上り時間とを、明確に確認することができます。これはRead Oneタイムスロットですが、サンプリング時のデータレベルがボーダーラインであるため、マスタによって誤判定される可能性があることに注意してください。



立上り時間が遅い場合、スレーブの再充電に必要な電圧レベルまでバスが到達するための十分なリカバリ時間(タイムスロット間の期間)が得られない可能性があります。上の画像では、スレーブの内部動作電圧が危険なレベルまで低下しています。特にWrite Zeroタイムスロットが多数連続する場合、電力不足が原因でスレーブがリセットする可能性があります。



より高度なネットワークバスドライバでは、インピーダンス整合とアクティブプルアップを使用して、長距離ネットワークおよびスレーブデバイスによって付加される荷重を克服します。上の波型は、Read OneまたはWrite Oneタイムスロットとアクティブプルアップの動作を示しています。



これは、Read Zeroタイムスロットにおける同じアクティブプルアップの動作です。



バスリセットシーケンスの中で、リセットパルスの後およびプレゼンスパルスの終了後に、ネットワーク荷重を克服するためにアクティブプルアップが使用されます。この画像では、近端と遠端のプレゼンスパルスがオーバラップする様子を確認することができます。マスタと遠端スレーブの間のケーブルによって付加される抵抗によって、遠端デバイスの方が近端デバイスよりもローのレベルが高くなっています。



この画像は、スタブおよび分岐に起因するケーブル上の反射によってアクティブプルアップが誤作動した場合に発生する混乱状態を示しています。これはRead Zeroタイムスロットですが、反射によってアクティブプルアップが作動してしまい、スレーブデバイスのプルダウンと競合しています。

:以上の波形は、すべてネットワークのマスタ端でキャプチャしたものです。ネットワーク上の他のポイントで波形を観察する場合は、オシロスコープのグランドによる1-Wireバスへの影響を避けるため、差動プローブを使用する必要があります。



その他の情報
アプリケーションノート187 「1-Wire検索アルゴリズム
アプリケーションノート244 「高度1-Wireネットワークドライバ
アプリケーションノート3829 「複数スレーブを備える1-Wireネットワークの回復時間の算出
アプリケーションノート3925 「1-Wire拡張ネットワーク規格
アプリケーションノート4104 「DS2480Bの1-Wireタイミングの理解と設定
アプリケーションノート4206 「組込みアプリケーション用の正しい1-Wireマスタの選択



1-WireはMaxim Integrated Products, Inc.の登録商標です。

iButtonはMaxim Integrated Products, Inc.の登録商標です。

JavaはSun Microsystems, Inc.の商標です。

WindowsはMicrosoft Corp.の登録商標です。


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