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一般的なエンジニアリングトピック
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キーワード:
回路解析, Excelを使った回路解析, 簡易な統計的回路解析
APP 2878: Mar 10, 2009
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アプリケーションノート 2878
エクセルを使った統計的回路解析
要約:このアプリケーションノートでは多くの回路をエクセルのスプレッドシートを使用して回路設計者が大局的な統計解析を行う簡単なテクニックについて説明しています。このテクニックは実際の回路動作を予測し、高い製造歩留りを得るためにも貴重なものとなります。
はじめに
現実上で動作する回路を設計することは簡単なことではありません。仕様目標を満たす回路の設計だけでは不十分です。部品の現実的な変化を含んだ予想される条件の範囲内で回路の動作を正確に予測することも重要です。この動作をよく理解することができれば、設計者は予想される製造誤差で動作する回路や部品を効果的に選択することができます。
回路のパラメータが変化しても正常に動作する回路は、組み立て、テスト、およびサポートのコストが安価になります。
このアプリケーションノートでは誤差のある部品を用いて作られた回路の製造歩留りの予測をするための誤差の扱い方を記しています。有効な歩留り解析をするには:
重要な部品やストレー(浮遊容量、インダクタ、抵抗値)などの正確な回路モデル
部品の種類における正確なモデル
パス/フェイルの定義や仕様
これらの3つの情報によって回路の歩留りを予測するための計算ができます。この計算をするためのツールは、その問題の複雑さや、どの程度の洞察力を必要とするかによって異なります。いくつかの方法を下記の表1にまとめます。
表1. 歩留り解析の方法
歩留り解析ツール
テクニック
最適な使用
スパイス
複数のシュミレーション
回路動作の裏付け。洞察を得るには不適切
スパイス
センス感度解析
重要な部品の予測に適切
正確なクローズドフォーム分析
回路の性能を決定づける方程式を使い感度解析をする。部品の誤差を表す式と感度から仕様を満たす確率を計算する。
簡単な問題にのみ適用。用いられているテクニックの理解の助けとなる。
マイクロソフトエクセル、MathCAD
製造データからcdfを作成し、それによって回路モデルを作る
中程度の複雑さ。現実のデータを扱い、問題を予見しやすい
このアプリケーションノートではマイクロソフトのエクセルを使用した歩留り解析の方法を記します。
確率分布関数のようないくつかの基本的な歩留り解析の概念について説明します。希望する確率分布にフィットするランダムな部品定数の発生の仕方について学習します。
部品定数と設計のための方程式によって決まる歩留り
部品によって回路は成り立っています。回路はこれらの部品を組み合わせて作り、回路全体としての動作はある種のルールや回路方程式によって決まります。歩留り解析を行うためには、部品のばらつきと回路方程式について知っていなければなりません。
一例として下記の
図1
の簡単な増幅回路を見てみましょう。この回路のゲインはR
f
とR
g
の抵抗値を知ることにより計算されます(これは理想的なオペアンプとします)。現実にはこの回路を数百回作った場合R
f
とR
g
の部品定数がそれぞれ異なります。回路のゲインを測るとそれぞれが違った値をとります。
この回路では部品の変化は抵抗値のばらつきになります。ゲインの設計式はGain = - R
f
/ R
g
です。一例として、もしR
f
= 1 kΩでR
g
= 1 kΩならばゲインはちょうど-1になるはずです。
図1. 反転オペアンプの例
最終的にこの回路の仕様は、Gain = -1 ± 0.1 V/Vのようになるでしょう。
部品PDFとCDF
一般に、ある一つの部品の値を事前に予測することはできません。しかしながら、経験上多数の部品がどう分布するか、またはどれだけ多くの製品がどのような挙動をするかを予測することができます。そのことを表すためにpdfまたは確率分布関数が使われます。
pdfはランダムな変数Xがある値xをとり得る確率を表す曲線または関数です。一例として簡単なオペアンプの回路で、R
f
の抵抗値に対してそれぞれの値がとり得る確率を一つの製造ロット内でプロットすることができます。
cdfは累積分布関数です。これはランダムな変数Xがある値x以下になる確率です。すなわち、cdfを積分することによってpdfを求めることができます。二つのパラメータ、平均値(中心値)と標準偏差(ピーク値の幅)で定義されたガウス分布または標準分布のpdfをおそらく使うことになるでしょう。標準分布のpdfとcdfを
図2
に示します。
図2. PDFとCDFの例
標準分布は現実での多くの状況に適合し、数学的に簡単に扱うことが可能です。しかし注意してください!標準分布は特殊な状況を表せないかもしれません。例えば、20%精度の抵抗の中から5%精度の抵抗がすべて抜き取られ売却されていたというようなこともあるでしょう。実際のpdfは
図3
のように見えるでしょう。
図3. ソーティングされた部品の分布
この分布では、測定された抵抗値が抵抗のラベルに書いてある値と一致する確率はゼロです! 標準分布している部品を使って作ったときに比べると回路の動作はかなり悪くなるでしょう。5%の抵抗を使って作った回路設計者は、分布の幅が小さいために期待以上の動作をしていることに気がつくことでしょう。
分布の種類はたくさんあり、どれを選ぶかが重要です。決して標準分布だけに拘らないでください。
エクセルでランダムな部品定数を作る
一連のランダムな値を使って生産工程での抵抗値を表すことができます。これらの値を回路方程式と合わせて用いることにより、回路のゲインを知り、仕様と比較したり歩留りを求めるために利用できます。下の図に例を示します。20台作ると、±20%のゲインの仕様に対して歩留りは80%となります(結果は生産回数ごとにやや異なります) 。
図4. ランダムな抵抗値の生成
上の解析では各抵抗値に均一に分布した乱数を使いました。均一分布の場合、抵抗値は二つのリミット値間の値を同じ確率でとります。この抵抗値を生成するにはいくつかの方法があります。ツール|データ解析|乱数の生成、またはRAND()の使用(RANDBETWEEN()も参照してください)。RAND()の機能を使う場合、スプレッドシートが計算するたびに(F9を押す)値が再計算されます。
残念ながら、大多数の部品は均一分布以外の分布に従います。しかしながら、この型式の解析は最悪の特性を求めるためには速くて便利です。
エクセルには他にもたくさんの関数があり、より現実的なpdfを提供してくれます。これらについては次のセクションで説明し、続いて製造データから任意のpdfを求める方法を説明します。
PDFとCDFの標準分布
標準分布またはガウス分布を生成するにはエクセルのNORMDIST()を使います。一例として"=NORMDIST($A7,0,1,FALSE)"はA7セルxの値に対して平均値 = 0、標準偏差 = 1で計算された標準分布確率を返します。
標準偏差(時としてシグマと呼ばれます)はpdf関数のピークの幅を表し、2次導関数の極性が変わる点に相当します。これは図2のpdfを算出するのに使用しました。"FALSE"を"TRUE"へ変えることによってcdfの値が得られます。
他に詳しい情報がない場合、部品の精度は±3の標準偏差であると仮定します。一例として、±10%の誤差を持つ部品の標準偏差は公称値に対して±10/3 = ±3.33%となります。
cdfとpdfは標準乱数を生成しますが、ランダム部品定数は得られません。理想的には標準分布にフィットする"RANDNORM()"のような関数が欲しいところです。
標準分布を持つ乱数の生成
エクセルにはRANDNORM()関数がありませんが、関数の追加機能により必要な機能を得ることが可能です。公称値1 kΩで±20%の分布を持つ10個の抵抗の通常値を生成させるには以下のステップをたどります。
平均値1 kΩで、標準偏差が±20%の1 kΩdivided by 3 = ±200/3 = ±66.67Ω
関数の追加機能によりリストを生成するために、ツール|データ解析|乱数の生成の機能を使います。 このダイアログボックスは次のようになります。
図5. 乱数生成のダイアログボックス
ステップ1で計算した平均値と標準偏差を入力します。生成される乱数の数を10とします。 エクセルが生成された値を出力するスプレッドシートのセル番号も入力しました。結果は次のようになります。
図6. エクセルで生成されたランダムな部品定数
他の便利な分布
エクセルにはツール|データ解析|乱数のダイアログボックスで選ぶことのできる様々な分布リストが用意されています。これらはNormal、 Uniform、 Binomial、 Bernoulli、Discrete、およびその他いくつかの形式も含まれています。先に示した均一分布は最悪条件を見つけるための簡単で便利な方法です。Binominalはロジック回路で見られるように(例、1と0) 2つだけの値を持った分布です。統計の本あるいは経験によって状況に応じて正しい分布を選択します。しかしながら、この分布が状況に適合しない場合にはどうすべきでしょうか?オリジナルの乱数を生成すればよいのです!次のセクションではこれらのことについて説明します。
製造情報に基づいた乱数の作り方
用意されている関数あるいは標準のpdf関数が回路の状況に全く合致しない場合があります。ソーティングされた抵抗の場合(図3参照)で見たように標準的でない分布がもたらす影響は非常に大きなものになります。
このような状況では製造テストデータから直接分布を作るか、あるいはその分布に合致する乱数によって計算された分布を使って歩留りの解析を行います。
そのような分布や乱数の生成にはいくつかの手順が必要となります (
図7
参照) 。
実際の部品を多数測定するか、あるいは計算等によってデータを作成する。おそらくこれらの情報は受け入れ検査などのプロセスから入手することができます。このデータはpdfを作成するのに利用されます。
データのヒストグラムを作り、サンプルの総数によって標準化する。これはすなわち、確率の総和が1となることと同じです。この標準化されたヒストグラムが生成したランダムデータをマッチさせるpdfとなります。
pdfを積分してcdfを作ります。その最大値の1に単調増加的に到達することを確認します。
0と1の間の均一分布乱数y、y~UY(0,1)を発生します。
均一分布乱数値をcdfがy = P(X ≤ x)となる点でのインデックスとして使い、xの値を読みます。
ステップ4と5を繰り返し、必要なだけの乱数値xを生成します。
図7. 生産データに一致する乱数値の生成
結論
このプリケーションノートでは歩留り解析に用いるランダムな部品定数の生成の方法を見てきました。一般的な分布はエクセルに予め機能として備わっているため速く簡単に生成することができます。特別な場合に対しても均一分布の乱数を測定されたcdfとともに使い、任意の分布の乱数を発生する簡単なテクニックが使えることを紹介しました。
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