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アプリケーションノート2980

洗練された回路でポータブルコンピューター用オーディオの品質を確かなものにする

要約:このアプリケーションノートでは、ヘッドフォンアンプの性能に影響する次の重要なパラメータについて考察します。PSRR (Power-Supply Rejection Ratio)、ターンオン過渡ノイズ除去、およびPCBのグランド処理。ソリューション:この記事では、MAX4410およびMAX4298/MAX4299ヘッドフォンアンプを使用したヘッドフォンアンプへの応用に注目します。

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オーディオデザインの挑戦は、高性能で低雑音アナログ回路を、ASIC、プロセッサ、及びD-DCコンバータと共存させることです。例えば、典型的なオーディオ再生をする繋がりの中の1つのコンポーネントであるヘッドフォンドライバへの影響の問題です。

ノートPC用のヘッドフォン出力は、ソースのダイナミックレンジを保持しながら、低インピーダンス負荷(標準では32Ω、場合により16Ω)を、最大1Vrmsの振幅の信号をドライブする必要があります。これは、簡単な作業に見えるかもしれませんが、より厳密な試験では、いくつかの厳しい現実をもたらします。
  • ヘッドフォン出力は、高速のディジタル回路と共有するDC-DCコンバータから単一電源を供給されいてる状態でも、このダイナミックレンジを維持しなければなりません。
  • これらの回路で前述のような信号振幅と負荷インピーダンス条件では、電源から引き出されるピーク電流は90mAまで及びます。
  • 電源やヘッドフォンドライバを停止する時、クリックや過渡音が聞こえないようにすべきです。

電源ノイズ

妥当な信号対雑音比を実現するためには、ヘッドフォンアンプ出力の電源雑音の影響を抑えなければなりません。その目的のためには、ヘッドフォンドライバの電源雑音除去(PSRR)が不可欠です。例えば、CDやDVDベースのダイナミックレンジは90dBを超えます。オーディオ電源電圧に100mVのノイズが生じると仮定し、そのノイズスペクトラムの多くが、オーディオ帯域にあるとすると、90dBのダイナミックレンジを維持するには、ヘッドフォン出力におけるノイズを、30µVまで低下させなければなりません。事実上、ヘッドフォンドライバのPSRRは、注目する周波数で70dBを超えなくてはなりません。

オーディオ帯域をまたがるような電源ノイズ除去を達成するには、周波数対アンプの電源ノイズ除去について特別の注意を払い熟慮した設計アプローチが必要です。多くのOP-AMPのデータシートでは、PSRRは、通常はDC近辺では高く、周波数が増加すると(通常、-20dB/decade)急激に低下すると述べています。20kHzでは、いくつかのパーツは40dB以下のPSRRを示します。

DC-DCコンバータには、可聴周波数の上限を上回るノイズ成分を発生するものもあります。理論上、このような周波数は聞こえませんが、ヘッドフォン出力のノイズとしては、依然として測定可能です。内蔵型のヘッドフォン向けのオーディオ用DAC (あるいはCODEC)のほとんどのデータシートでは、PSRR仕様について読者の注意を引くようには書かれていないということに注意してください。もし、PSRRが提示されても、通常は、PSRR対周波数特性曲線でなく、電気的特性の一項目として表記されます。

ほとんどのヘッドフォンアンプは十分なSPRRを欠くので、ヘッドフォンアンプの電源電圧をきれいにするために、外部に低ドロップアプト(LDO)型レギュレータを追加することも出来ます。ノートPCで、オーディオ出力の十分な電源ノイズ除去を達成するには、例えば、オーディオ回路の共通の電源電圧が+5Vである場合、特定ノードを+4.7V程度まで低下させて安定化することはよく行われます。

MAX4298/MAX4299 (超高PSRRステレオドライバ)のようなICは、デバイスの中の重要なノードにサブレギュレータを追加することによって、他の一般的な方法よりも高いレベルのPSRRを達成しています。このアプローチでは、1kHzにおいて100dB以上のPSRRを可能にし、外部レギュレータを不要にしています(図1)。

図1. この典型的なMAX4289の応用では、220µFのAC結合コンデンサが、ヘッドフォンへDC電圧が掛かるのを防止していることに注意してください。オプションの部品(複数)は、電源断時の過渡信号の大きさを制御します。
図1. この典型的なMAX4289の応用では、220µFのAC結合コンデンサが、ヘッドフォンへDC電圧が掛かるのを防止していることに注意してください。オプションの部品(複数)は、電源断時の過渡信号の大きさを制御します。

クリックとポップの抑制

クリック/ポップ抑制は、通常、ICがミュートされたり、電源の投入切断時に不意に生じる過渡ノイズを最小化するICの能力として記述します。切迫した異常をマスクするダウンストリーム側の回路がないので、この動作を出力ドライバの中で解決することは困難です。ヘッドフォンが差し込まれると、必然的にヘッドフォンを駆動しているものがなんであれ、オーディオシステムの過渡的な性能の成否を握ります。

ヘッドフォンドライバは通常単一電源から電源供給され、図2で示すように、大きなコンデンサ経由のAC結合でジャックソケットに出力されます。これは、ヘッドフォンユニットを破壊してしまうようなDC電圧がヘッドフォンに掛からなくするための構成です。動作中は、ブロッキングコンデンサの両端は、ヘッドフォン側はグランド電位、アンプ出力側は電源レールの中間電位にバイアスされます。このコンデンサは、電源が印加された時には、動作電圧まで蓄電されなければなりませんが、一方、電流は、それが機能するために負荷(ヘっドフォンのボイスコイル)に流れるようにしなければなりません。どうしたらオーディオ信号から生成された電流を阻止できるのでしょうか?

図2. この回路は、単一電源製品におけるヘッドフォンドライバの通常の構成です。回路は、ヘッドフォンのインピーダンスとともにハイパスフィルタを構成する直列接続のコンデンサを含みます。(コンデンサは、ヘッドフォンにDC電流が流れること阻止するためにも必要です。)
図2. この回路は、単一電源製品におけるヘッドフォンドライバの通常の構成です。回路は、ヘッドフォンのインピーダンスとともにハイパスフィルタを構成する直列接続のコンデンサを含みます。(コンデンサは、ヘッドフォンにDC電流が流れること阻止するためにも必要です。)

アンプ出力の周辺にJFET及びディスクリート部品を使って、充電電流を抑制するデザイン方法もあります。ターンオン時の過渡特性を遅くするRCタイマを提供し、外乱の周波数成分を低下させて阻害要因を低下させる方法もあります。少なくとも、ある1つの製品は、背中合わせの指数関数型の傾斜曲線(S字型曲線)を使用して、電源投入時の「ポップ」を抑えています。RC指数関数のアプローチと異なり、そのプロファイルでは、dv/dtの急激な変化を発生しません。

電源遮断時の過渡特性は、さらに問題です。いかなるアンプが、電源が無い状態で、出力コンデンサの放電を制御できますか?1つのアプローチは、ヘッドフォンアンプに、電源が存在しているときに、電荷を得るコンデンサをもつ予備電源をつけて、主電源が切断された後、ゆっくりとシャットダウンするだけの十分なエネルギーをアンプへ供給する方法です。図1に示すこの技術を統合した適用例は、図3の波形を生じます。

図3. これらの波形は、図1の回路において、V<sub>CC</sub>	を(t = -1s)に与え、(t = 0s)に取り除いた時の効果の説明図です。V<sub>CC</sub>は、示されていません。MAX4298出力(上側軌跡)のS字型推移は滑らかで、負荷(下側軌跡)における妨害出力は制限されていることに注意してください。制御された出力は、低いオーディオ周波数(耳はその領域では敏感でないのですが)に対してターンオン時の過渡現象を制限しています。
図3. これらの波形は、図1の回路において、VCC を(t = -1s)に与え、(t = 0s)に取り除いた時の効果の説明図です。VCCは、示されていません。MAX4298出力(上側軌跡)のS字型推移は滑らかで、負荷(下側軌跡)における妨害出力は制限されていることに注意してください。制御された出力は、低いオーディオ周波数(耳はその領域では敏感でないのですが)に対してターンオン時の過渡現象を制限しています。

図3で明白に示されるように、MAX4298に少数のコンポーネントを追加することによって、電源投入時のスムーズな挙動を反映させる制御された電源遮断のゆるやかな過渡現象を実現することができます。このテクニックは、第2のVCCピン(SVCC)を使用して、VCCが存在する時に、外部のショットキーダイオードが蓄積コンデンサをチャージしておきます。そして、電源が除去された時にMAX4298は以下のように反応します。
  • オーディオはミュートされる。
  • ステレオアンプは、SVCC端子から電源を供給されて、低い静止電流モードに戻ります。
  • 出力バイアス電圧は、電源投入時の波形を反映して、dv/dtの急激な変化を除去するS字型曲線を使って緩やかに落ちます。
  • 蓄積コンデンサは結局放電しますが、出力電圧はグランド電位です。そして、SVCC電源が結局無くなった時、出力の過渡現象は無視できます。

別のアプローチ

上記の解決策は、マーケティング的には高く評価することのない無形の特徴を満足するための相当な努力です。しかも、BOM上では余分な項目です。理想的なアプローチは、出力コンデンサを取り除いて、ヘッドフォンのボイスコイルに流れる充放電の効果を無くする方法です。例えば、アンプを両極性の電源供給とし、0Vの出力バイアスを持つようにし、ヘッドフォンドライブをDC結合にすることで、出力コンデンサを取り除くことが出来ます。

ほとんどのバッテリー電源動作の設計では、単一電源という制限を持ちますが、設計者は2、3のオプションがあります。1つは、ヘッドフォンのリターンを、いわゆる電源レールの中間電位にバイアスする3番目のアンプを用いることで、擬似0Vの出力バイアスを生成します。メインのステレオアンプも電源レールの中間電位にバイアスされていますから、DC結合用コンデンサは除去できます。従って、3番目のアンプは、両方のメインアンプからのシンク電流とソース電流に対応できなければならないこと、そして、ヘッドフォンジャックから入力されるどんなESD放電も扱えるように、十分に堅牢であることが必要です。(ジャックスリーブは筐体から必ず絶縁されていなければなりません。)

別のオプションは、供給される正の電源から専用の負の電源を生成するか、それ自身で負の電源を生成する便利な部品を利用することです(図4)。このアプローチは、ESDやグランドの問題を少なくします。また、これによる余分の電圧幅は、ピーク出力電圧を2倍にすることが可能になり、+3Vやそれ以下の電源で動作する場合に有効です。

図4. アンプが2つの電源から電源供給されるようにするため、内蔵のチャージポンプは、正の電源を反転します。直列接続するコンデンサはもはや必要ありませんが、チャージポンプ用の小さなセラミックコンデンサー必要で、PCBエリアを最小限にします。
図4. アンプが2つの電源から電源供給されるようにするため、内蔵のチャージポンプは、正の電源を反転します。直列接続するコンデンサはもはや必要ありませんが、チャージポンプ用の小さなセラミックコンデンサー必要で、PCBエリアを最小限にします。

MAX4410ヘッドフォンアンプは、正電源端子から自身の負電源を生成します。アンプは0VにバイアスされたDC出力であるため、出力コンデンサは不要です。内部ロックアウト回路は、低すぎる電圧や電源の投入切断過程での供給電源に起因する異常な動作を防ぎます。それで、ポップやクリックもありません。このアンプの出力電圧の振幅は、等価な単一電源のものよりほとんど2倍近くあるため、信号振幅余裕が大きく、出力電力も大きいという、他の利点もあります。

さらなるハードル

実際に設計作業を進めるには、新製品を売り出す前に、通常は多くの妥協を強いられます。ESDの必要条件は、例えば、ヘッドフォンドライバとジャックソケット間にフェライトビーズ又は他のEMC手段を入れなければならないかもしれません。それらの部品は、オーディオ周波数域において、かなりのインピーダンスを持ったり、クロストーク問題を引き起こしたり、出力を損失させたりするかもしれません。注意深い設計とケルビンセンシング技術は、良いオーディオ性能を回復することできます。

ヘッドフォンからのリターン電流は同様に考慮されるべきです。グランドプレーンやPCBトラック(パターン)の有限なインピーダンスに、100mAが流れた場合、重大なIRドロップ電圧が生じます。DC-DCコンバータとグランドを共有した場合、同様のメカニズムでSNR (信号対雑音比)を低下させます。この点に関しては、専用のリターントラックか銅ベタのパターンが有効です。

ディジタル化の将来は?

ディジタル入力のヘッドフォンが増加しないかぎり、ジャックソケットを駆動する回路はアナログのまま残ります。クラスDの設計法は、アンプの出力端までをディジタルオーデオパスにしますが、効率を維持しEMIを低下させるためにはフィルタ部品が必要です。PSRRとクリック/ポップの抑制はやはりオーディオ性能を下げてしまうので、アナログのハード設計技術者は、もうしばらくの間、有効に活用され続けるでしょう。


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