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アプリケーションノート3264

MAX8521を使用したコンパクトなDWDMレーザの温度制御

要約:DWDM (Dense Wavelength Division Multiplexing)レーザモジュール用の完成された非常にコンパクトな熱制御ソリューションは、MAX8520/21と1個のオペアンプを用いて作ることができます。DWDMは1本の光ファイバ上に多数のレーザを用いるため、レーザ周波数の注意深い制御が必要です。このノートで述べる設計は、25GHzのチャネルスペーシングに必要とする性能レベルを容易に可能とし、DWDMファイバ光学システムに関わる設計者にとって理想的な基盤を提供します。

DWDM (Dense Wavelength Division Multiplexing)レーザモジュール用の完成された非常にコンパクトな熱制御ソリューションはMAX8520/21と1個のオペアンプを用いて作ることができます。DWDMは1本の光ファイバ上に多数のレーザを用いるため、レーザ周波数の注意深い制御が必要です。チャネル間隔を25GHzとする1548nmのDWDMシステムではレーザ周波数を25GHz帯域の中心に維持する必要があります。レーザモジュールはその動作温度を変化させることによって、中心帯域に調整され、それを時間と環境変化に対して維持する必要があります。通常、レーザドライバは0.1nm/℃ (25GHz/℃)の割合で変化するため、温度コントローラは少なくとも±0.1℃の安定性が必要です。このことにより、変調されたレーザのスペクトラムを帯域の中心(±2.5GHz)に保つことができ、チャネル間クロストークを最小に抑えます。ベンダは、1本の光ファイバ上に160ものチャネルを収容することを約束します。

レーザモジュールはその動作温度を15℃~35℃の範囲で変化させて、その中心帯域に設定しなければならず、周囲温度は0℃~70℃の間で変化するため、コントローラは加熱と冷却を必要とします。ペルティエ熱電クーラー(TECs)がこの機能を果たしますがクーラーのパワードライバは両方向(加熱と冷却)が可能でなければなりません。さらに、ドライバは加熱から冷却モードに移行するとき、デッドバンドやハンチングを示してはなりません。MAX8520/21は、最大1.5Aを供給(ソース)または流入(シンク)することができる双方向パワードライバです。レーザモジュールに内蔵された温度モニタ(10kΩのサーミスタ)と1個のオペアンプと共にMAX8520/21を用いると、熱の調整ループとして、PID (Proportional Integral differential)コントローラを実現することができます。その回路ブロックは下の図1に示されています。詳細回路図と部品リストは、このアプリケーションノートの最後に記載されています。

図1. 熱制御ループのブロック図
図1. 熱制御ループのブロック図

この回路において、JU4は、基準温度電圧を設定するために、DAC (D/Aコンバータ)またはポテンショメータを用いて構成することができます。その場合、オペアンプは温度の基準電圧をサーミスタ電圧と比較して、その差を増幅してMAX8520/21に供給します。MAX8520/21は、オペアンプによって検出された誤差が減少するように電流を出力して、ループを完成させます。MAX8520/21は、±1.5Aの電流を作り出すためにCTLI端子で±1.5Vの電圧を必要とするため、オペアンプはこの信号を入力における温度誤差から生成しなければなりません。温度限界を±0.1℃に設定し、サーミスタの感度が14mV/1℃であることを知ることにより、必要とするオペアンプのゲインを計算することができます。

0.1℃*14mV/1℃_ = _1.4mVであり、
また1.4mV*ゲイン_ = _1.5Vであるので、
オペアンプのゲインは最小でも1.1kを必要とします。

オペアンプの反転入力端子に50kΩの抵抗を選択すると、10µFの積分コンデンサは少なくとも50MΩのインピーダンスがなければならないことが分かります。このゲインを保証するためには、注意深い部品の選択とレイアウトを必要とします。太陽誘電は1µFより大きいコンデンサに対して1GΩ/µFの仕様を定めています。10µFの場合は、これは100MΩに相当します。この値の測定値は、ずっと大きくなりますが、適切なレイアウトと実装技術がなければ、湿度と半田フラックスが、ハイインピーダンスの回路性能を達成しようとする努力を簡単に無効にしてしまいます。環境恒温槽の温度を0℃として試験を行うと、水が凍結して回路性能を損ないます。PCB (プリント回路基板)上のリーク電流もまた、このインピーダンスレベルでは問題を発生する可能性があります。このためには、オペアンプの反転端子とその周辺部品の周りにガードリングを施すことを推奨します。このガードリングの位置を図2に示します。

図2. ガードリングのためのPCBレイアウト
図2. ガードリングのためのPCBレイアウト

ガードリングは、以下のように機能します。DACの出力電圧は、オペアンプの反転入力電圧にほぼ等しいため、ガードリングと合流点及びリングの内側の関連部品との間には本質的に電位差が存在しません。リングは、外側の表面リーク電流を妨害し、そこでDACの低インピーダンスによって短絡させます。低インピーダンスのリングが、高ゲインのノードの合流点をリーク電流から保護(ガード)します。ガードリングのトレースが広いほど、その効果は大きくなります。DACの出力電位にあるグランドプレーンも、同様に敏感な回路部品の直下のレイヤに置く必要があります。ガードリングがあっても、水またはその他の表面の汚れは、やはり回路の性能を損ないます。究極的な対策として、実装が終わった後に洗浄して乾燥させたPCB及び部品にアクリル樹脂をベースとしたコンフォーマルコーティングを施す方法があります。PCBの実装業者は、要求すれば実装した後で、この方法を実施することができます。

オペアンプが誤差信号を発生させた後、MAX8520/21はCTLI入力端子での誤差信号をバイポーラの出力電流に変換して出力します。MAX8520/21の電圧制御された出力電流は、有害な電流サージを制御して、プログラマブル電流制限を提供することに役立ちます。出力電流と電圧制限は、外付け抵抗器を使って、それぞれ独立して設定することができます。MAX8520/21は、小型20ピンQFNパッケージ及び超小型UCSP™パッケージの中に4個のパワーMOSFETを内蔵しています。消費による発熱は、PCB上の銅のグランドプレーンに半田付けされるチップ下部の露出した金属パッドを通して放熱されます。MAX8520/21の高速スイッチング周波数は、外付け部品の小型化に役立ちます。

TECモジュールは、熱時定数が長いため、安定性を保つために制御ループも低速でなければなりません。PIDループの部品は、1Hzのユニティゲインのクロスオーバを提供するように選択されます。このループのDCゲインが定常状態の性能を決定しているのに対して、ループのACゲインの帯域幅は過渡応答を決定します。最も高い安定した利得帯域幅を実現すると、最速の過渡応答が得られ、時間の経過と共に、積分器がループ誤差を指数関数的に減少させることが分かっています。

無限大のゲインによりPIDループの定常状態の誤差はゼロとなりますが、システムの立上りなどの過渡的な状態では、ループゲインは、無限大よりはるかに小さい値となります。このことは図3の熱プロットとして示されています。図3は温度のステップ変化に対するTECのシステム応答を示しています。このテストに対して、モジュールの内部レーザ温度は25℃ (Vtherm = 0.75V)に設定されています。外部温度は20分で25℃から45℃に変化(1℃/分)した後、40分間保持されています。最後に1℃/分の割合で25℃に戻されています。図3からこの過渡温度に対して熱誤差が200µVピークトゥピーク、15m℃、または±7.5m℃であることが分かります。保持期間の最後には、定常誤差は50µVピークトゥピーク以下となり、過渡誤差よりもはるかに小さい値となります。この報告書の熱データは制御システムがサーミスタの温度を正確に制御することができることを示しますが、これはレーザの温度または作り出される光の波長を正確に表すことにはならないことを認識することが重要です。

図3. 制御ループの温度性能を示す12時間のストリップチャート
図3. 制御ループの温度性能を示す12時間のストリップチャート

図4は、3つの異なる外部温度傾斜変化(1分あたり1/0.7/0.3℃の変化)に対するシステム応答を示します。このテストでは、モジュールの内部温度は35℃に設定されています(Vtherm = 0.592V)。正確な温度測定は、セットリングに長時間を要することに注意することが重要です。事実、セットリング時間を十分に長くすると、プロットは図4の3つの変化速度の中心に従うようになります。図5は、レーザの内部温度を15℃ (Vtherm = 0.916V)に設定して、図4と同じテストをした結果を示しています。

図4. モジュールの設定温度が35℃で3つの異なった温度変化に対するサーマルループ性能
図4. モジュールの設定温度が35℃で3つの異なった温度変化に対するサーマルループ性能

図5. モジュールの設定温度が15℃で3つの異なった温度変化に対するサーマルループ性能
図5. モジュールの設定温度が15℃で3つの異なった温度変化に対するサーマルループ性能

熱テストを行う場合、回路の性能を悪化させることに水が重要な役割を演じることを認識することは重要です。0℃以下では水は凍るため回路に影響しません。しかし、温度が上昇して、氷が溶けるとリーク電流が流れ、熱性能が悪化します。上述したように、アクリル樹脂をベースとしたコンフォーマルコーティングを回路に施すと、この事態を改善することに役立ちます。

図6. 長時間の安定性のプロット(最大温度誤差は0.0018℃)
図6. 長時間の安定性のプロット(最大温度誤差は0.0018℃)

図6は、長時間(8時間)の安定性を示します。このプロットは、最大の温度誤差が25µV、即ち1.8m℃であることを示しています。このテストは10秒ごとに電圧計を読み取ったものであり、従って、テストの帯域幅は幾分、制限されています。このテストで示される優れた性能の重要な理由は、MAX4238チョッパ安定化オペアンプを使用しているためです。チョッパ安定化は、オフセットとドリフトを最小に抑えます。さらにオペアンプのシャットダウン端子はMAX8521のイネーブル端子と並列接続に構成されています。これは、PIDの積分コンデンサがレイル電位から起動する場合のサージを制限するためになされます。MAX4238は、シャットダウンモード時に高い出力インピーダンスを持つため、MAX8521のCTLI端子は、オペアンプ出力と積分コンデンサ(C16)を1.5Vに充電し、TECを流れる電流はゼロとなります。これは、起動サージを制限するのにとても役立ちますが、そうでない場合は、積分コンデンサが放電するまで(20秒)、TECモジュールに最大電流が流れます。

DWDMファイバ光学システムは、疑いなく単一波長システムを代替することになります。ほとんどのベンダは、100GHzスペーシングで始めており、25GHzチャネルスペーシングを計画しています。マキシムの製品であるMAX8520/21は、25GHzのチャネルスペーシングに必要とされる性能レベルを容易に提供し、DWDMファイバ光学システムに従事する設計者にとって理想的な基盤となります。マキシムは、また、MAX8521を超小型のUCSPパッケージで提供することができ、これはレーザモジュール内蔵用として十分に小さく、さらなるスペースの節約が可能となります。

図7.
図7.

図8.
図8.

1個のオペアンプを用いたMAX8521の設計
DESIGNATION QTY DESRIPTION
C8 1 0.047µF, 50V, X7R Ceramic Cap. (0402) Murata (GRM36X7R473K10)
C17 1 0.022µF, 50V, X7R, Ceramic Cap.(1206) Kemet (C1206C223K5RACTU)
C6, C7, C12-C14 5 0.1µF 16V X7R Ceramic Cap. (0402) Murata (GRM36X5R104K10)
C1-C3, C5, C11, C20 6 1µF 10V X5R Ceramic Cap. (0603) Taiyo Yuden (JMK107BJ105MG) Murata (GRM188R60J105KA)
C4 1 10µF 6.3V X5R Ceramic Cap. (0805) Taiyo Yuden (JMK212BJ106MG)
C9, C16, C18 3 10µF 6.3V X5R Ceramic Cap. (1206) Taiyo Yuden (JMK316BJ106ML)
C21 1 150µF Electrolytic Cap, Sanyo (10MV150SAX) (Note: 150µF Total Buss Capacitance or Stiff Line Input)
L1, L2 2 2.2µH, 1.6A Inductor Sumida (CDRH2D18-2R2)
Q1-Q3 3 NPN Bipolar Transistor, 40V SOT-23 Central Semi. (CMPT3904)
R1 1 0.1Ω, 1%, 0.25W, Sense Resistor (1206) Panasonic ERJ8RSFR10
R19 1 10Ω 5% resistor (0805)
R12-R15, R18 5 1kΩ 5% resistor (0402)
R9-R11 3 4.7kΩ 5% resistor (0402)
R20 1 10kΩ, 0.1%, 25ppm/C°, resistor (0805), Panasonic, (ERA6YEB103)
R3 1 49.9kΩ 1% resistor (0402)
R17 1 49.9kΩ 5% resistor (1206)
R4 1 100kΩ 1% resistor (0402)
R16 1 240kΩ 5% resistor (0603)
R23 1 10k Potentiometer (multi-turn) Bourn 3266W-1-103
SW1 1 Switch, Momentary, NO Mouser (101-0010)
U2 1 Op Amp, (SOT23-6) Maxim (MAX4238AUT)
U4 1 Serial 14 Bit DAC (10-pin µMAX®) Maxim (MAX5144EUB)
U1 1 Power Driver (20-Pin THIN QFN) Maxim (MAX8521ETP)

µMAXはMaxim Integrated Products, Inc.の登録商標です。
UCSPはMaxim Integrated Products, Inc.の商標です。


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