幸いFCCの測定帯域幅には、より狭い、より現実的な仕様が存在します。これはどの文献にも記載されていませんが、適合検査を行う会社はこの仕様を知っており、FCCのWebサイトにあるOffice of Engineering and Technologyというページで調べれば確認できます。このあまり知られていない仕様では、測定帯域幅は許容される20dBの放射帯域幅の少なくとも1%でなければならないと定めています。したがって、315MHzの信号の場合、787.5kHzという帯域幅の1%は大体8kHzですから、スペクトルアナライザの帯域幅を10kHzに設定すれば条件を満たすことができます。433.92MHzの信号の場合、1.085MHzの1%は10kHzをわずかに上回ります。したがって、スペクトルアナライザを10kHzの1段階上の30kHzに設定しなければなりません。いずれの信号の場合も(315MHzでも433.92MHzでも)、測定帯域幅は100kHzより小さくなります。
ヨーロッパでは、433.05MHz~434.79MHzの帯域において最高+10dBmの送信信号が認められています。ETSI EN 300 220-1仕様に適合する第一の目標は、すべての帯域外放射を250nW(-36dBm)以下に、470MHz~862MHzの領域では4nW(-54dBm)以下に抑えることです。433MHz帯において「帯域外」という言葉は、433.05MHzから434.7MHzまでの1.74MHzのスペクトルの外部のすべての周波数を意味します。433.92MHzが選択されたのは、この帯域の中心だからです。このキャリア周波数に対して、±870kHz以上離れた放射はすべて「帯域外」です。この-36dBmの規制を受ける放射には、2種類のカテゴリーがあります。第1のカテゴリーは、信号の変調側波帯の中で±870kHzの範囲外に位置するものです。第2のカテゴリーは、スプリアス放射です。
図3は、データレート8kpbsの場合、各側波帯の中心が4kHzの奇数倍の位置になることを示しています。したがって、4kHzの第219次高調波による側波帯が、キャリアから870kHz以上離れた最初の完全な側波帯になり、この側波帯の送電力が-36dBm以下でなければなりません。表2によると、第219次側波帯の電力はキャリアローブのスペクトル高より51dB低くなっており、これは-36dBmの制限より十分に低いように思えます。無変調のキャリアで測定される送信電力には+10dBmという規制値が適用されるため(ETSI EN 300 220-1、Section 8.2)、側波帯の電力は実際には無変調のキャリアの電力より57dB低く、さらに条件が良くなります。トランスミッタが+10dBの最大許容電力で放射を行っている場合、側波帯の電力の計算値は-47dBmであり、-36dBmという要件より11dB低くなります。FCCの規制と同様、トランスミッタの位相ノイズのレベルとこの電力を測定する手法の相乗効果で、電力レベルの測定値は理論値よりも大きくなります。
ETSI EN 300 220-1、Section 8.6は、この変調およびその測定について取り上げています。測定方法の指示では、レシーバ(またはスペクトルアナライザ)の帯域には主要な変調側波帯をすべて受け入れるだけの十分な大きさが必要であり、電力測定はピーク電力で行う(スペクトルアナライザを「マックスホールド」に設定する)と書かれています。標準的なスペクトルアナライザの帯域幅設定は1kHz、3kHz、10kHz、等であり、図2と図3から、キャリアローブと2つの基本周波数側波帯をカバーするためには少なくとも10kHzの帯域幅が必要であることがわかります。10kHzという帯域幅には、1つの側波帯(null点間8kHz)の全電力に加えて、隣接する側波帯の電力がわずかに含まれることになり、そのため測定値は1つの側波帯に含まれるよりも約1dB大きな値(すなわち-46dBm)になります。ピーク電力の測定値は平均電力より最大10dB高くなる可能性があるため、それによって電力の測定値が-36dBmに高まり、ちょうどETSIの規制値と一致することになります。測定ラボによっては、8kbpsデータレートからの主要な変調側波帯をすべて受け入れるために、30kHzの分解能帯域の使用を主張するかも知れませんが、その場合は測定値が-31dBmに上昇します。これでは明らかにETSIの規制値を超えてしまうため、10kHzの帯域幅を維持するためにデータレートを下げる必要があります。安全なデータレートは5kpbsであり、この場合3つすべてのローブが10kHz以内に入ることが保証されます。変調パルスをシェーピングして、より高いデータレートを実現することも可能です。変調パルスのシェーピングによって高次の変調側波帯における電力が大幅に低下するため、より高い測定帯域幅を使用しても帯域辺縁部での電力ははるかに低くなります。
ETSI 300 220-1の改訂案(既存のVersion 1.3.1に対し、Version 2.1.1となる予定)では、振幅およびASK変調信号に対してはるかに厳しい制限が課されます。側波帯の構造を問わず、この測定には100kHzの分解能帯域が要求されるようです。現時点では、これはまだ採択されていません。もし採択された場合でも、発効するのはその2~3年後になります。
スプリアス放射
ETSI 300 220-1のSection 8.7では、スプリアス放射を、通常のテスト変調に伴うキャリアと側波帯の周波数以外の周波数における放射と定義しています。この測定は、意図しないミキサ成分やクロック高調波の検出を目的としたものであり、キャリアを変調した結果のスペクトル高を調べるためのものではありません。測定は可能な限り無変調のキャリアで行うため、変調側波帯は問題になりません。この測定では、測定帯域内のトランスミッタ位相ノイズの電力レベルを考慮する必要があります。