ENGLISH 简体中文 日本語 한국어  


アプリケーションノート3651

交番磁界がある場合の回路解析

要約:変圧器、電動モータ、およびスイッチングレギュレータ内のインダクタのような電力源は交番磁界を発生し、ノイズを誘導して電子回路に妨害を与えます。このプロセスを理解することによって、設計者は磁気干渉をよりよく抑制することが可能になります。

無料ウェブセミナーに登録して、オーディオシステムの問題を把握し、測定し、解決する方法について学びましょう。(English only)

無料ウェブセミナーに登録して、オーディオシステムの問題を把握し、測定し、解決する方法について学びましょう。(English only)

オームの法則やキルヒホフの電圧法則(KVL)は、従来の回路解析(メッシュ解析)用の強力なツールです。しかしながら、交番磁界が回路内に存在する場合、ファラデーの法則も同じように使用する必要があります。交番磁界で引き起こされた付加電流を説明するには、ある条件をオームの法則やKVLに加える必要があります。ファラデーの法則を回路解析の計算式に導入することは、2つの電圧が回路内の2つのノード間に同時に共存するように現われ、それらの電圧は電圧計のリードの位置に依存して現れるというように、予期しない変則結果を生み出します。

交番磁界がない回路の解析(復習)

磁界がない状態では、設計者は、メッシュ技術に基づく回路解析を行うために、普通KVLおよびオームの法則を使用します。一般的に教科書に説明されているように、KVLは、閉ループ周辺の全ての電圧の代数和はゼロに等しい(式1)と説明しています。

磁界がオフにされた図1の回路を考えてみます。電圧計を用いてループ内の各部品すべての電圧を測定する場合、KVL (式2)によって予測されているように、それらの電圧の合計はゼロに等しくなります。(反時計方向に行うと、抵抗器両端の電圧は負になることに注意してください。)

図1. 交番磁界の効果を説明するために、磁界があるなしの簡単な閉ループ(バッテリおよび2個の抵抗器によって形成)の応答を考えます。
図1. 交番磁界の効果を説明するために、磁界があるなしの簡単な閉ループ(バッテリおよび2個の抵抗器によって形成)の応答を考えます。

オームの法則とKVLを適用して、図1の部品の値を求めることが出来ます。まず最初に、式3と4を式2に置き換えることによって、ループ電流の式を得ます。そして、電流を求めると式5が得られます。

KVLは積分形式で書くことができることに注意してください。電磁理論の教科書は、図1のノードAからノードCまでのように、電圧を経路(dl)に沿った電界(E)のベクトル積分と定義しています(式6)。磁界がオフである状態では、ノードAからCEAに戻る閉ループの積分値は、ゼロに等しくなります(式7)。このように、キルヒホフの電圧法則は積分の形式で書くことができ、電界の閉ループの積分はゼロに等しくなります。

交番磁界がある所での回路解析

今、図1で磁界をオンにします。その磁界は時間とともに変化し、これがループに電流を発生し、そしてその条件は、ファラデーの法則の使用を必要とします。ファラデーの法則は、閉ループ周辺の電界強度の接線成分の積分は、そのループに隣接する表面を通過する磁力線に対する変化の時間率に等しいと示しています(式8)。

ここで、Bは磁界、Aは対象となる表面領域、そして、Fはその領域を通る総磁束です。誘導電流の方向は磁界の方向によって決まります。図1において、磁界が紙面から出ていると示されると、誘導電流は右回りです。全電流は、ここではバッテリ(IU1)と磁気誘導(IMAG)双方による電流の合計になります。

オームの法則は、この追加の電流を説明するために修正(拡張)する必要があります。

KVLも同様に拡張されなければなりません。式1、式7、および式8間を比較すると、KVLが-d/dtの項を式1の右側に加えることによって拡張されることを示しています。

式2から5までは、時間依存の磁界成分を含めるために書き直すことが出来ます。

このように、式1から5までは、磁界によって引き起こされた電流を計算に入れて拡張され、式11から15のようになります。式11は拡張KVLであり、式15は拡張オームの法則で、電流の方向を示すd/dt項のサインを持っています。これらの式は相当簡単なように見えますが、実際にはそうではないようです。

式12から15までを使って、交番磁界を持った図1の回路の解析を考えます。U1両端(ノードA~F)の電圧は、VAF = U1です。しかし、VAFは、ループ内の電流と2つの抵抗を掛けたものとも等しくなります。

ここでは、ノードA~Fに対して2つの発生する電圧を持っています。実際に、図1の部品を含むノードの各一対について2つの発生する電圧があります。式16から25までを参照してください。簡単な比較のために、U1 = 2V、d/dt = 1V、R1 = 2k、およびR2 = 4kと仮に設定します。そうすると、式15に基づいたループ電流は0.5mAになります。

ノードB~Cは特に興味深く、その理由は、R1を通る電流はゼロではないにもかかわらず、その両端電圧はゼロであるかも知れないからです。同様に、ノードE~Fは、短い(ゼロオームの)配線ですが、その両端電圧はゼロではありません。従って、それはどちらの電圧なのでしょうか? その数学は間違っていません。同時に2つの電圧が共存するのです! 数学的には、得られる電圧は、その測定で採用された積分の経路によって決まります。電圧は与えられた経路に沿った電界内でのベクトル積分であることを思い出してください。時間に依存する磁界が存在すると、その積分は経路依存となります。端的に説明すると、その電圧は、測定回路(電圧計)がどのようにノードに接続されているかによって決まります。

図2に示されているように、電圧計#1は左側からノードA~Fを測定し、U1 = 2Vの測定結果を得ます。一方、電圧計#2は、右側からノードA~F (B~EA~Fと同じ)を測定し、その結果は次式です。

図2. どちらの電圧計も同じノードを測定していますが、測定された電圧は異なります。電圧計#1は、U1内で電界を積分し、そして電圧計#2は、R1とR2内で電界を積分します。
図2. どちらの電圧計も同じノードを測定していますが、測定された電圧は異なります。電圧計#1は、U1内で電界を積分し、そして電圧計#2は、R1とR2内で電界を積分します。

一般の誤解に反して、誘導電圧は、抵抗器を接続する配線においてではなく、抵抗器内で分配されます。配線内の電界の積分はゼロですので、配線両端の電圧はゼロです。プローブの接触をA点からB点までスライドさせることにより、接続配線両端の電圧落下がゼロであることを、実験室での実験で確認することが出来ます。このように、電圧計#1上の電圧は変化しません。同様に、FからEまで接触をスライドさせると、電圧計#1上では電圧は変化しません。同じことを電圧計#2に適用し、BからAまで、またはEからFまでの接触をスライドさせても、電圧計の読み値は変わりません。電圧計のプローブは、磁界からの干渉を最小限にするために配置されることに注目してください。

測定された電圧は、プローブの位置に依存して現れます。電圧計#1は電界積分器の働きをし、バッテリU1内の電界を積分します。電圧計#2は、R1およびR2内の電界を積分します。異なる積分経路は異なった電圧をもたらします。

別の例によって、この位置依存の効果を示すことができます。図3で、オーディオ信号(1kHzのサイン波)が音量調整のポテンショメータ(R1)によって減衰され、オーディオ増幅器に入力されて、その出力がスペクトラムアナライザで分析されると考えます。すぐ近くにある電動モータは、R1およびオーディオ信号源によって形成されたループ内で磁気妨害を発生します。簡単にするために、R1は、1kと直列に接続されている10kの抵抗器に置き換え、磁力線を拾うループは、意図的に1平方インチに拡大されています。2つの実物の基板レイアウトがテストされました(図4)。

図3. このオーディオアプリケーション回路は、磁気妨害がどのようにオーディオ品質を劣化させるかを説明しています。
図3. このオーディオアプリケーション回路は、磁気妨害がどのようにオーディオ品質を劣化させるかを説明しています。

図4. 10k<img src=http://media.maxim-ic.com/images/ohm.gif>の抵抗器(<b>a</b>)の近く、またはループ(<b>b</b>)の先頭でグランド配線を接続すると、音量制御回路の物理的レイアウトが磁気妨害に影響を及ぼすことを示しています。
図4. 10kの抵抗器(a)の近く、またはループ(b)の先頭でグランド配線を接続すると、音量制御回路の物理的レイアウトが磁気妨害に影響を及ぼすことを示しています。

図5a5bは、オーディオ増幅器の出力スペクトラムを示します。1kHzのオーディオ試験信号はどちらの場合にも同じですが、300Hzのモータ妨害の振幅は、グランド接続のみによって決まります。最悪の磁気妨害(-62dBc)は図4aに見られ、このオーディオ増幅器は、10kの抵抗器からの妨害電圧を受けます(図5a)。事実上、オーディオ増幅器は、10kの抵抗器内で電界を積分する電界積分器の働きをします。一方、図5b (図4bでの出力スペクトラム)は、1kの抵抗器から受けた妨害電圧であることを示します。このプロット(-78.5dBc)で示されたより小さい妨害は、16.5dBの改善になっています。(抵抗器の比率は10:1ですので、予測される妨害比率は20dBです。しかし、オーディオ増幅器の入力インピーダンスの負荷効果は、図5aの妨害振幅を低くします。)

図5a. 図4aにおける電動モータからの磁気妨害は、ピークが300Hzでオーディオ試験信号からほぼ62dBc下がったところになります。
図5a. 図4aにおける電動モータからの磁気妨害は、ピークが300Hzでオーディオ試験信号からほぼ62dBc下がったところになります。

図5b. 図4bにおける電動モータからの磁気妨害は、ピークが300Hzでオーディオ試験信号から78.5dBc下がったところにあり、図5aの回路よりも16.5dB改善されています。
図5b. 図4bにおける電動モータからの磁気妨害は、ピークが300Hzでオーディオ試験信号から78.5dBc下がったところにあり、図5aの回路よりも16.5dB改善されています。

この現象は、付録Aに紹介されている二つの電圧の数学的な展開とともに、実験的に証明されています。2つのノード間の電圧ははっきりと定義されておらず、それらの配線がどのように配置されるかに依存していることに注意してください。この実験は、2つのノード間の電圧がもはや単純な代数の表現ではなく、与えられた経路に沿った電界のベクトル積分であることを表しています。積分は経路または位置依存ですので、異なった経路に沿った積分は、異なった電圧をもたらします。前のセクションの式9から15は、位置依存の効果をはっきりと予測しませんので、それらは非常に注意深く使用されなければなりません。

磁気妨害がある場合のPCBレイアウト

上述の結論を繰り返すと、電動モータやスイッチング電源内のパワーインダクタのような部品からの磁気妨害は、システム内でノイズを発生させる原因になります。良好なプリント基板レイアウトは、この妨害を最小限にすることができます。
  • ルール#1: ノイズに敏感な回路から磁気部品を十分に遠ざけます。
  • ルール#2: 回路ループの一部分である電子部品(IC、抵抗器、コンデンサ等)を接近させて、ループの面積を最小限にします。
  • ルール#3: 最も磁気妨害が少ないグランド接続を確認するために、前記に示された解析を使用します。
  • ルール#4: ルール#3のグランド接続が容易に確認することができない場合は、その代りに大きなグランド平面を使います。実験では、大きなグランド平面は磁気妨害が小さいことを示しています。

結論

交番磁界が存在しない場合には、回路解析にキルヒホフの電圧法則とオームの法則を問題なく適用することができます。しかし、そのような磁界が存在する場合には、ファラデーの法則の補助を用いて、KVLとオームの法則を拡張しなければなりません。上記で説明されたように、交番磁界の存在は、一組のノードの両端に同時に2つの電圧を生じさせます。デュアル電圧効果は、電圧計プローブの位置に依存して現れ、「電圧」の用語を曖昧にします。2つのノード間の電圧は、もはや単純な代数あるいは数値公式では表されず、複合的ベクトルの積分して表されます。これも同じく経路依存します。このように、磁界がノイズをどのように回路に誘導するかを理解することは、プリント基板の設計者が、磁気妨害を最小限にするように部品を配置するのに役立てることができます。

付録A

簡略化するために、図1のU1をゼロに設定します(U1はゼロに設定する必要はありませんが、以下の説明では有効になります)。図1は、電圧計の接続と交番磁界が存在するように図A1に描き直されています。

図A1. この回路は、二つの電圧計で測定し、交番磁界がノードA~Bで二つの異なった電圧をどのように引き起こすかを示しています。
図A1. この回路は、二つの電圧計で測定し、交番磁界がノードA~Bで二つの異なった電圧をどのように引き起こすかを示しています。

図A1の抵抗器両端の電圧は、ファラデーの法則とオームの法則を使って知ることができます。電界強度(E)とノードAからノードBまでの経路Cに沿った経路dlの積のベクトル積分として、電圧を定義します。図A1から、式A1とA2がV1とV2を表します。

V1からV2を引くと、式A3が得られます。積分を右側の項でBからAに変え(AからBへの代りに)、またこれによってサインの変更を示すことにより、式A3は式A4になります。

式A4の右側は、磁界(磁束密度Bで示される)を囲む閉ループに1回沿った電界の線積分です。ファラデーの法則から、式A5は式A4に相当します。

従って次のようになります。

ここで、Aはループにより区分された面積で、はその面積を通る総磁束です。簡略化のために、磁界が時間と共に直線的に増加すると仮定し、d/dt = αとします。

両方の抵抗器を通る電流は同じであり、オームの法則は、電圧降下と電流を式A7で表します。積分が電流と同じ方向にあることに留意してください。式A7は、両側で積分をノードAからBまでに変え、負の符号をR1の項に加えることによって、式A8に書き直されます。

これは、C1とC1’が磁界を含まない閉ループを形成し、経路C1に沿った積分はC1’に沿った積分と同じだからです。同様に、C2’はC2と置き換えることができます。次に、式A8を置き換え、式A1とA2からV1とV2の表現は式A9になります。最終的に、連立方程式A6とA9を解くと、電圧V1とV2 (式A10とA11)の求めている結果が得られます。

V1とV2の極性が反対であることに注意してください。さらに、抵抗器両端の電圧は経路に沿った電界の積分です。d/dt ≠ 0の場合、その積分は経路に依存しています。その効果は、いわゆるエネルギーが一定でない電界の影響になります。経路C (図A1)に沿ったノードAB間での電界の積分は、経路C2に沿った積分で得られたものと異なった値を与えます。このように、測定電圧は、電圧計がどちらの経路を「見る」かによって決まります。

参考文献

1Robert H. Romer, "What do 'Voltmeters' Measure? Faraday's Law in a Multiply-Connected Region," American Journal of Physics. Vol. 50, No. 12 (Dec. 1982), pp. 1089-1093.


フィードバックをお寄せください。
内容に満足されましたか、あるいは満足されていませんか?もっと良いページにできると思いますか?あるいは、単なるコメントでも結構です。フィードバックをお待ちしています。—マキシムはお客様からいただく訂正、提案を元に改善していきます。 このページを評価し、フィードバックを送信する。


自動アップデート
お客様が関心のある分野でアプリケーションノートが新規に掲載された際に自動通知Eメールの受信を希望する場合は、EE-Mail™にご登録ください。



その他の情報  APP 3651: Jul 11, 2006
MAX4410 シャットダウン付き、80mW、DirectDriveステレオヘッドフォンドライバ フルデータシート
(PDF, 880kB)
無料
サンプル
 

ダウンロード、PDFフォーマットダウンロード、PDFフォーマット (146kB)
 AN3651, AN 3651, APP3651, Appnote3651, Appnote 3651


      プライバシーポリシー    法的お知らせ

      Copyright © 2008 by Maxim Integrated Products, Dallas Semiconductor