EoPDHを一言で表すと、十分に確立されたPDH (Plesiochronous Digital Hierarchy)伝送テクノロジの活用による、既存の銅線通信インフラ上におけるネイティブなEthernetフレームの伝送です。実際のEoPDHは、キャリア各社が旧来のPDHおよびSDH (Synchronous Digital Hierarchy)機器による既存のネットワークを利用して、新しいEthernet中心のサービスを提供することを可能にするテクノロジおよび新しい規格の集合になっています。さらに、EoPDH規格の集合は相互運用性への道を拓き、キャリア各社が徐々にEthernetネットワークに移行することを可能にします。EoPDHで使用されている標準化されたテクノロジには、フレームのカプセル化、マッピング、リンクアグリゲーション、リンク容量調整、および管理メッセージングが含まれます(簡略化した用語を使っています)。またEoPDH機器で一般に行われる処理として、分割して仮想ネットワークに送出するためのトラフィックのタギング、ユーザトラフィックの優先順位付け、およびDHCPサーバやHTMLユーザインタフェースなどの幅広い上位層アプリケーションも含まれます。
フレームのカプセル化というのは、Ethernetネットワーク上で伝送を行うために、補助的フォーマット内のペイロードとしてEthernetフレームを配置するプロセスです。カプセル化の第1の目的は、フレームの先頭と末尾のバイトを識別することです。これを、フレームデリニエーションと呼びます。実際のEthernetネットワークでは、フレームデリミタの先頭とレングスフィールドがフレームデリニエーションの機能を果たします。カプセル化の第2の役割は、散発的な(「バースト性」の) Ethernet伝送を、スムーズで連続的なデータストリームにマッピングすることです。一部のテクノロジでは、各フレームにFCS (Frame Check Sequence)を付加することによって、カプセル化が誤り検出の役割も果たしています。HDLC (High-Level Data Link Control)、LAPS/X.86 (Link Access Procedure for SDH)、GFP (Generic Framing Procedure)など、数多くのカプセル化テクノロジが存在します。理論上は任意のカプセル化テクノロジをEoPDHアプリケーションに使用することができますが、GFPに大きな優位性があることから、望ましいカプセル化手法として浮上してきました。ほとんどのEoPDH機器は、レガシーシステムとの相互運用性を確保するため、HDLCとX.86のカプセル化もサポートしています。
GFPはITU-T G.7041で定義されており、HEC (Header with Error Control)フレームデリニエーションを利用しています。他のカプセル化プロトコルの中には、HDLCのようにスタート/ストップフラグを使用するものがありますが、ユーザデータ中にスタート/ストップフラグが現れた場合、より長いエスケープシーケンスに置き換える必要があり、帯域幅の拡大が生じます。HECフレームデリニエーションを利用することで、GFPではデータストリーム中でのフラグ置換が不要になっています。これがGFPに、一貫性のある予測可能なペイロードスループットという大きな優位性をもたらしています。保証されたスループットを顧客に提供する必要があるキャリア各社にとって、この点は極めて重要です。図1に、GFP-F (Frame-mapped GFP)のフレームフォーマットを、比較対象のHDLCとともに示します。ネイティブなEthernetとGFP-Fでカプセル化されたEthernetで、オクテット数が同じであることに注目してください。このちょっとした特長によって、速度の調節が簡単になっています。フレームデリニエーションを行う上位プロトコルへのEthernetフレームのカプセル化が終わると、次に伝送のためのマッピングを行うことができます。
リンクアグリゲーションを機能の面から見ると、2つ以上の物理的接続を組み合わせて、単一の仮想接続にするものです。リンクアグリゲーションの実体は、複数の信号経路にデータを分配し、異なるレイテンシを持つ経路から受け取った情報のアラインメントを整え、データを正確に再編集して上位プロトコルに透過的な形で受け渡すための、構造化された方法論です。リンクアグリゲーションも、決して新しいものではありません。マルチリンクフレームリレー(MLFR)、マルチリンクPPP (MLPPP)、マルチリンク手順(X.25/X.75 MLP)、およびInverse Multiplexing over ATM (IMA)は、リンクアグリゲーションテクノロジのごく一部の例に過ぎません。これらの中で、IMAとMLFRが最も広く普及しています。
図4. リンクアグリゲーションのアプリケーション例
リンクアグリゲーションは、図4に示すように2つのネットワークノード間の帯域幅を増大し、より高スループットのPDHまたはSDHトリビュタリへの移行を先延ばしできるようにするために使われるのが一般的でした。リンクアグリゲーションの1形式であるEthernet in the First Mile (EFM、IEEE 802.3ahで定義)は、複数のDSL回線を結合し、特定の距離における帯域幅を増大させるか、または多くの場合より重要な目的として、特定のスループットでサービス可能な距離を効果的に増大させます。
VCATオーバヘッドバイトの下位ニブルには、様々な伝送遅延を持つリンクからのフレームのアラインメントに使用される、マルチフレームインジケータ(MFI)が格納されます。上位ニブルには、MFIを構成する16の値の1つごとに一意に定義されたコントロールワードが格納されます。この上位ニブルは、Virtual Concatenation and Link Capacity Adjustment Scheme (LCAS) informationの頭文字を取ってVLIと呼ばれます。
図6. DS1/E1用のVCATオーバヘッドバイトの定義
結合されたリンクは、全体としてVirtually Concatenated Group (VCG)と呼ばれます。図7に示すように、VCGのすべてのメンバがそれぞれにVCATオーバヘッド経路を持ちます。図7では、VCGの各メンバに対するデータの配置も図示しています。EoPDHリンク結合の完全な仕様は、ITU-T G.7043で規定されています。
優先順位付けは、Ethernetフレームがネットワーク内のいずれかのポイントでバッファリングされる場合に使用することができます。フレームがバッファ内で待機している間、最も優先順位の高いトラフィックが最初に送信されるようにスケジューリングを行うことが可能です。優先順位付けは、信号で停止している車の並べ替えという形で具象化することができます。ノードからの出力データ速度が入力データ速度より低い場合、バッファリングを行う必要があります。通常、こうした状況はネットワーク輻輳による過渡的現象であり、極めて短時間だけ存在します。長期間にわたってノードの出力速度が入力データ速度よりも低い場合は、フロー制御を使用して「バックプレッシャ」をかけ、データソースからのデータを減速する必要があります。長距離の帯域幅は短距離と比較して高コストであるため、後者の状況はローカルエリアネットワーク(LAN)のトラフィックがワイドエリアネットワーク(WAN)接続に入るノードで一般的に見られます。このノードは通常「アクセスノード」と呼ばれ、トラフィックの優先順位付けにおいて最も重要な役割を果たします。優先順位付けとフロー制御というこの2つの概念は、一般にサービス品質(Quality of Service:QoS)と呼ばれるものの基礎になります。多くの人が、優先順位付けを使うと優先順位の高いトラフィックに対して保証付きの「空いたパイプ」が提供されると誤解しています。実際には、優先順位付けとスケジューリングは、単にバッファ付きノードにおいて「より重要な」トラフィックの遅延が最小になるようにするだけです。QoSを適切に実装するためには、他にも考慮すべき面がいくつかあります。
帯域幅のニーズとスケーラビリティ EoPDHのリンクアグリゲーションは、1.5Mbpsから360Mbpsまで、最小1.5Mbps単位で伝送に使用される帯域幅のスケーリングを可能にします。この帯域範囲は、IPTVのような大きな帯域幅を必要とするアプリケーションを含めて、近い将来予想されるすべてのアクセスアプリケーションに対応するものです。進入ポイントにCIR (Committed Information Rate)回路を使用することによって、エンドユーザに供給する帯域幅の粒度をさらに細かくすることができます。