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アプリケーションノート4088

ビデオサブシステムの動作およびスタンバイ電力の低減による携帯ビデオシステムのバッテリ寿命延長

筆者: Miles Bekgran

Michael Petersen

Ronald Koo

要約:ディジタルスチルカメラ、携帯電話、およびポータブルメディアプレーヤなど、より多くの携帯機器が、コンポジットビデオ出力接続の機能を持つようになってきました。これらの機器では、ビデオディジタル-アナログコンバータ(DAC)がコンポジットビデオ信号を生成し、出力コネクタに到達する前にローパスフィルタ、そして増幅される必要があります。既に設計エンジニアは、ビデオフィルタアンプを選択する際、消費電力、全体のコスト、サイズ、およびビデオ品質を考慮しています。このアプリケーションでは、次世代携帯機器の追加要求について述べ、新世代ビデオフィルタアンプがそのような要求をいかに満足させるかを説明します。

このアーティクルはマキシムの「エンジニアリングジャーナルvol. 61」(PDF、1.01MB)にも掲載されています。

ディジタルスチルカメラ、携帯電話、携帯型メディアプレーヤなどの携帯機器が、コンポジットビデオ出力接続の機能を持つようになってきました。このような機器では、ビデオ信号を発生するビデオディジタル-アナログコンバータ(DAC)の後にビデオフィルタアンプが接続されます。現在の3.3Vビデオフィルタアンプは、ビデオ信号を処理している間に45mWの電力を消費します。

携帯機器ではバッテリ寿命が重要な問題で、ビデオシステムICの消費電力を低減することが切に望まれます。結果として、1.8Vで動作する最新世代のビデオフィルタアンプは12mWしか消費しないため、消費電力が約70%低減されます。

すべての電力はどこへ行くか?

単純に考えると、各回路は回路自体の動作と負荷の駆動に対して電力を消費します。図1では、電源が全電流(IT)を回路に供給します。ここで、IQはオペアンプの自己消費電流で、ILは負荷電流です。

Figure 1. A single-supply operational amplifier is shown with a resistive load to ground.
図1. 抵抗負荷がグランドに接続された単一電源のオペアンプ。

電力は電流に電源電圧を掛けることによって求められます。自己消費電力(PQ)、負荷消費電力(PL)、全消費電力(PT)は、次式によって一次のオーダーまで計算されます。

PQ = VDD × IQ
PL = VDD × IL
PT = PQ + PL = VDD × (IQ + IL)

現実のアプリケーションで実際の消費電力を最小にするためには、PQとPLの両方を小さくする必要があります。VDD、IQ、およびILのいずれかの組合せを減らすと、この目的が達成されます。

通常、ICのデータシートにはIQまたはPQのみの仕様しか記載されておらず、信号と負荷が標準的な場合の平均消費電力が記載されることはほとんどありません。PQは、携帯ビデオフィルタアンプにとってほとんど役に立たない情報です。回路はシャットダウン、または完全にイネーブル(ビデオフィルタアンプが、ビデオ信号によってビデオ負荷を駆動する場合と定義)のいずれかであるからです。バッテリを節約するためには、ビデオ負荷がない場合にビデオフィルタアンプをシャットダウンにすべきです。ビデオ負荷がないときにビデオフィルタアンプをイネーブルにすると、バッテリを無駄に消耗します。

3.3Vビデオフィルタアンプの消費電力

3.3Vビデオフィルタアンプがビデオ信号によってビデオ負荷を駆動すると、その消費電力は表1に示すように増加します。平均消費電力は、ビデオフィルタアンプが50%フラットフィールドビデオ信号によってグランドに接続された150Ω負荷を駆動するという条件で定義されます。50%フラットフィールド信号は、テレビにグレイスクリーンとして現れるもので、標準ビデオ信号の代りに使用されます。(PLは画像コンテンツに依存します。ブラックスクリーンは所要電力が最小ですが、ホワイトスクリーンは所要電力が最大です。) 製品の平均消費電力は、PQがかなり異なっていてもよく似ています。

表1. 各種ビデオフィルタアンプの平均消費電力と自己消費電力
Company Part Supply
Voltage (V)
Average
Current
(mA)
Average
Power
(mW)
IQ (mA) PQ (mW) Output Style
Maxim MAX9502 3.3 13.5 44.6 5.3 17.5 Positive DC bias
TI® OPA360 3.3 12.2 40.1 6 19.8 Zero DC bias
Maxim MAX9503 3.3 13.2 43.4 12 39.6 DirectDrive®

ビデオ信号によってビデオ負荷を駆動することによる消費電流の増加は、ビデオアンプの出力形式に大きく依存します。MAX9502は、正のDCバイアスを持ったビデオ信号を出力します(図2参照)。出力信号の正のDCバイアスを維持すると、全消費電力の増加を招くことになります。そのため、MAX9502は、約8.7mA (図2bに太い青い線で示した電圧を150Ωで割って算出)を供給する必要があります。

Figure 2. The MAX9502G application circuit shows the input and output of a 50% flat-field signal.
図2. 50%フラットフィールド信号の入力と出力を示すMAX9502Gのアプリケーション回路。

Figure 2a. This 50% flat-field waveform is input into the video filter amplifiers being considered.
図2a. 50%フラットフィールド波形は、検討対象のビデオフィルタアンプへの入力です。

Figure 2b. In the MAX9502G's output waveform, the blue line indicates the approximate DC average of a 50% flat-field signal.
図2b. MAX9502Gの出力波形における青い線は、50%フラットフィールド信号のおおよそのDC平均電圧を示しています。

OPA360 (表1)は、その出力に2個のAC結合コンデンサからなるSAGネットワークが接続された状態で動作します(図3)。これらのコンデンサは出力と負荷の間のDC接続を断ち切ります。結果的に、アンプは出力のバイアスを維持するために電流をソースまたはシンクする必要がなくなり、これによって電力の増加が最小限に抑えられます。

Figure 3. Given a 50% flat-field signal, the OPA360 application circuit minimizes power increase because the capacitors break the DC connection between the output and the load.
図3. 50%フラットフィールド信号を仮定すると、コンデンサは出力と負荷の間のDC接続を断ち切るため、OPA360のアプリケーション回路は電力の増加を最小限に抑えます。

Figure 3a. The OPA360's output waveform contains a blue line indicating the approximate DC average of a 50% flat-field signal.
図3a. OPA360の出力波形中の青い線は、50%フラットフィールド信号のおおよそのDC平均電圧を示しています。

マキシムの特許取得済みDirectDrive技術を採用することによって、MAX9503はゼロDCバイアスに近いビデオ信号を出力しますが、AC結合コンデンサを必要としません(図4参照)。この技術によって、内蔵の反転チャージポンプが負の電源電圧を生成するため、MAX9503は出力をグランド電位以下に駆動することができます。DirectDriveはPQを増加させますが、PLが低いためにMAX9503の平均消費電力はMAX9502やOPA360と同じ範囲にあります。DCバイアスはグランド電位に近いため、MAX9503が供給する電流は少なくて済みます。

Figure 4. A 50% flat-field signal is processed through the MAX9503G application circuit.
図4. MAX9503Gのアプリケーション回路で処理される50%フラットフィールド信号。

Figure 4a. The MAX9503G's output waveform has a blue line indicating the approximate DC average of a 50% flat-field signal.
図4a. MAX9503Gの出力波形中の青い線は、50%フラットフィールド信号のおおよそのDC平均電圧を示しています。

新世代:1.8Vビデオフィルタアンプ

マキシムの最新ビデオフィルタアンプファミリの最初のデバイスであるMAX9509では、図5に示すように、平均消費電力とPQの両方が大幅に減少しています。電源電圧(VDD)は3.3Vから1.8Vに減少しており、この1.8Vは携帯電話が移行中のディジタルI/O電圧です。自己消費電流(IQ)も12mAから3.1mAに減少しています(表2参照)。

Figure 5. The MAX9509 1.8V application circuit processes a 50% flat-field signal, showing significantly reduced power consumption.
図5. MAX9509の1.8Vアプリケーション回路による50%フラットフィールド信号の処理。消費電力が大幅に低減されます。

Figure 5a. A 50% flat-field waveform is input into the MAX9509; it has one-quarter the amplitude of the waveform used in Figure 2a.
図5a. 50%フラットフィールド波形をMAX9509に入力すると、図2aで使用した波形の半分の振幅となります。

Figure 5b. In the MAX9509's output waveform, the blue line indicates the approximate DC average of a 50% flat-field signal.
図5b. MAX9509の出力波形では、青い線が50%フラットフィールド信号のおおよそのDC平均電圧を示します。

表2. MAX9509の平均消費電力と自己消費電力
Company Part Supply
Voltage (V)
Average
Current
(mA)
Average
Power
(mW)
IQ (mA) PQ (mW) Output Style
Maxim MAX9509 1.8 6.5 11.7 3.1 6 DirectDrive

新しい1.8VディジタルI/O電圧を利用したビデオ回路を設計する際に対処すべき特殊な問題については、関連記事の「1.8Vビデオフィルタアンプに関する回路の考察」をご覧ください。

ビデオフィルタアンプが1.8V電源で動作するときは、DirectDriveが不可欠です。電圧モード出力段を備えたアンプは、少なくとも2VP-Pでスイングしてコンポジットビデオ信号を出力する必要があります。1.8Vの単一電源で動作する従来のアンプは、2VP-P出力信号を処理するのに十分なヘッドルームがありません。しかし、DirectDriveでは、内蔵の反転チャージポンプがノイズの多い-1.8V電源を生成します。このとき、負のリニアレギュレータであれば、-1.8V電源をチャージポンプノイズのきわめて小さい-1Vまで上昇させます。このため、-1V~+1.8Vの範囲の電源電圧に関しては、ここでMAX9509に2VP-Pのビデオ信号を出力するのに必要ぎりぎりのヘッドルームを持たせることになります。

低い電源電圧、低いIQ、およびDirectDrive出力段を組み合せた場合、MAX9509の平均消費電力(表2)は表1に示す3.3Vデバイスの平均消費電力よりもかなり低くなります。注目すべきことは、MAX9509の平均消費電力が3.3VビデオフィルタアンプのPQよりも低いことです。

このような低い電力で動作している高速回路の不安の1つは、ノイズが著しく増えることです。これは、回路が通常よりも低い電流レベルで動作するからです。MAX9509の設計過程ではノイズを慎重に検討しており、このデバイスは64dBという非常に優れたピーク信号対ノイズ比(SN比)を備えています。これは民生用アプリケーションにとって十分過ぎるくらいです。テレビ画面で見えるようになるピークSN比は約40dBです。

ノイズの多いチャージポンプがフィルタおよびアンプと同じダイにあることは、設計上最大の懸念材料でした。チャージポンプが繊細なビデオ波形にスイッチングノイズを注入するおそれがあるからです。MAX9509のチャージポンプとビデオ信号経路の回路を分離することは非常に有効であるため、チャージポンプのノイズが周波数掃引に現れなくなり(図6)、時間領域でもほとんど目立たなくなっています(図7)。

Figure 6. Charge-pump frequency spikes are not discernable when measuring the MAX9509's noise vs. frequency.
図6. MAX9509のノイズ対周波数を測定しても、チャージポンプの周波数スパイクは認識することができません。

Figure 7. The MAX9509's output (bottom trace) is measured vs. time, taken with respect to a 1VP-P video signal. The spikes are 1.4mVP-P. The top trace is the voltage on the top plate of the charge pump's flying capacitor.
図7. 1VP-Pビデオ信号を基準として測定されたMAX9509の出力(下の波形)対時間。スパイクは1.4mVP-P。上の波形は、チャージポンプのフライングコンデンサの上側の極板における電圧。

消費者の観点からすると、広帯域ノイズもチャージポンプノイズもMAX9509が出力する信号を表示するビデオ画面上で見えません。

低電力ビデオフィルタアンプの今後の方向性

近年、低電力ビデオフィルタアンプには進展が見られますが、IC設計者には依然として課題が残っています。

ビデオ負荷検出を考えてみます。たとえば、ビデオフィルタアンプが負荷を電気的に検出して、システムを動作させているマイクロコントローラに負荷のステータスを知らせることができる場合、ビデオ出力回路は有効なビデオ負荷が存在するときのみビデオ出力回路をオンにすることができます。結果的に、このシステムはビデオ電源をよりインテリジェントに管理することができます。現在のビデオ負荷検出方法では、ジャックの挿入を機械的に検出してビデオ出力回路をオンにします。この場合、ケーブルの他端がテレビやその他のビデオモニタのジャックに実際に差し込まれていなくてもバッテリが消耗する可能性があります。電気的なビデオ負荷検出の副次的な利点は、標準的なコネクタに比べてコストがかかりスペースをとるメカニカルジャック検出を備えたコネクタの代りに、標準的なコネクタさえあれば十分であることです。

低消費電力は携帯機器で常に重要でしたが、高いエネルギーコストと地球温暖化に対する懸念から、AC電源で動作する機器の場合にも、ますます重要になっています。したがって、この傾向はさらにインテリジェントな電源管理をアナログチップに集積化しようという方向に向かっています。ビデオフィルタアンプの場合、低電力であるだけでなく、ビデオ負荷検出、ビデオ入力検出、および動作モードを通じて電源をいったん切ってすぐに入れ直す制御回路を内蔵させる必要があります。ビデオチップの大半は価格競争が厳しい家電製品で使われているため、最大の課題はコストの著しい増大を招くことなくインテリジェントな電源管理を追加することです。

補足:1.8Vビデオフィルタアンプに関する回路の考察

1.8Vの低電力ビデオフィルタアンプを設計するときは、特別な配慮が必要になります。バイアス電流値を賢く選定して最も生産性の高い電源電流を配分してください。注意深いレイアウトによって、寄生成分が少なくなり、デバイスの整合が良好になります。最後に、回路のすべての分岐に使用される電流を入念に調べて解析してください。こうした作業によって、消費電力が最適化され、回路の帯域幅が必要な周波数応答とビデオ性能を維持するのに必要な値に狭められます。

MAX9509の消費電力は、入念な回路設計を通じ、またマキシムの先進BiCMOSプロセス技術を利用することによって前世代の消費電力よりも低くなっています。前世代のビデオ設計の回路はすべて解析されて消費電力が最低となるように最適化され、対象とするアプリケーションに対しても十分な性能を維持しています。たとえば、MAX9509の電源レイル間におけるカレントミラーの回数は少なくなっています。生成された負レイルの使用も最小になっています。さらに、このような無駄のない電流でアンプを動作させることによって歪みが起きないようにするために独自仕様の回路を適用しています。

MAX9509の消費電力は、マキシムの最新のアナログプロセス技術によって低減されました。これによって、個々のビデオ信号経路に対して最適な部品(たとえば、バイポーラとMOS)の選択が可能です。MAX9509の5極フィルタは前世代の6極フィルタ付きアンプに必要であった余分な双2次フィルタ段を省いたものです(図8図9)。5極フィルタと6極フィルタのフィルタ仕様の違いは民生用アプリケーションの場合ごくわずかで、双2次フィルタ段を省くことによって全消費電流の10%以上の低減が可能になります。

Figure 8. Previous generations of video filter amplifiers had 6-pole filters.
図8. 前世代のビデオフィルタアンプは6極フィルタを備えていました。

Figure 9. The MAX9509 has only a 5-pole filter, which eliminates a biquad filter stage, thus providing a 10% reduction in overall supply current.
図9. MAX9509は双2次フィルタ段を省いたわずか5極のフィルタであるため、全消費電流が10%削減されます。

フィルタとアンプの回路を注意深く分配することによって、一定のシステム仕様に対して使用される全電流が少なくなるように信号経路内の各ブロックの要件が最適化されます。たとえば、MAX9509で利得8を実現するためには、フィルタ内部に利得4のプリアンプを使用します。したがって、最終ビデオアンプでは2V/Vの利得のみで済むため(図9)、最終ビデオアンプの要件(したがって、電源の要求)が緩和されます。両アンプの全消費電力は、低く、実行されている機能に対して最適化されます。

同様の記事が「Electronic Products」の2007年10月号に掲載されています。

DirectDriveはMaxim Integrated Products, Inc.の登録商標です。
TIはTexas Instruments Incorporatedの登録商標です。

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MAX9507 負荷検出およびデュアルSPSTアナログスイッチ内蔵、1.8V、DirectDriveビデオフィルタアンプ フルデータシート
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MAX9509 1.8V、超低電力、DirectDriveビデオフィルタアンプ フルデータシート
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MAX9510 1.8V、超低電力、DirectDriveビデオフィルタアンプ フルデータシート
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