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リファレンスデザイン4321

高精度計測アンプとリジャスタ(rejustor)の組合せによる高利得アプリケーション向けソリューション

筆者:Maurizio Gavardoni

要約:このアプリケーションノートでは、ゼロドリフト、高精度、計測アンプと、2個のリジャスタ(電気的に調整可能な受動抵抗器)および利得設定用の抵抗を使用して、高い精度を保証する方法を示します。デバイスの具体例として、高精度計測アンプMAX4208を使用します。実験方法を解説し、テスト結果を示します。

はじめに

計測アンプは幅広いアプリケーションで使用されており、小さな差動信号を生成するセンサとインタフェースされる場合もあります。それらのアプリケーションでは、計測アンプが高くて非常に高精度な利得を提供する必要があり、また非常に低いオフセット電圧を維持する必要があります。条件によっては、センサから出力される差動信号がわずか数mV程度であり、アンプの利得が1000倍という場合もあります。

一部の統合型計測アンプには利得設定用の抵抗が内蔵されており、固定利得の選択肢がいくつか用意されています。しかし、柔軟性が必要とされ、センサの信号をADCのフルスケールレンジに適合させる必要がある場合、2個の外付け抵抗の比によって利得を調整することができる計測アンプの方が設計者にとって好都合です。ところが、たとえ最高の精度を持つ計測アンプであっても、外付けの利得設定抵抗の精度によって性能が損なわれる可能性があることも覚えておく必要があります。

このアプリケーションノートでは、ゼロドリフト、高精度、計測アンプと、2組のリジャスタおよび利得設定抵抗を使用して、高利得での精度を保証する方法を示します。

調整可能な利得を備える計測アンプ

MAX4208は、インダイレクト電流帰還と呼ばれる革新的なアーキテクチャを使用した、超低オフセット/ドリフト、高精度計測アンプです。このデバイスは2個のトランスコンダクタンスアンプ(図1)と高利得ブロックを備えており、2個の外付け抵抗を使用して負のフィードバックを供給します。アンプの出力と差動入力との関係は、次式によって表されます。
VOUT = VIN × (1 + R2/R1)
(ただしVIN = VIN+ - VIN-)

2個のトランスコンダクタンスアンプは、差動電圧入力から出力電流を生成し、コモンモード入力信号を除去します。負のフィードバックによって、2つの差動入力が強制的に等しくなります。

Figure 1. MAX4208 functional diagram.
図1. MAX4208のファンクションダイアグラム

温度変化に対して非常に高い精度を提供する最良の外付け抵抗は、離れた値のものだけが入手可能です。その結果、これら2個の抵抗を組み合わせた値では、アプリケーションが必要とする正確な公称利得値を得ることができない可能性があります。さらに、正確な公称利得値を提供する抵抗が入手可能な場合でも、回路に含まれるその他の非理想性や不整合が原因で、利得が理想的な公称値から外れる可能性があります。結局、高い利得精度を得るため現実的な解は、抵抗値の調整によることになります。

MAX4208の超低利得誤差(±0.05% (typ)、±0.25% (max) / +25℃)も、外付け抵抗の許容誤差によって劣化する可能性があります。したがって、計測アンプの性能に見合うものとするためには、許容誤差0.25%以下の抵抗を使用する必要があります。しかし、そうした仕様を持つ抵抗は、アンプ自体よりも高価になる可能性があります。

調整不可能な抵抗の(多くの場合は限定的な)離れた抵抗値の問題と、低許容誤差値に対する要件の問題は、すべてリジャスタ(電気的に「再調整可能な」抵抗)の使用によって克服することができます。

リジャスタ

Microbridge®のRejustor™は、受動型で、VLSIおよびMEMS対応の、電気的に調整可能なマイクロ抵抗器です。リジャスタは不揮発性であり、調整値を保持するために電源を必要としません。何度でも、両方向に、非常に高い精度で(たとえば、様々な要因に応じて0.1%~0.002%で)調整可能です。電気信号のみを使用してポリシリコン抵抗の結晶構造を熱的に変化させ、それによって抵抗値を変更します。一度変更された結晶構造は、意図的な過熱によって再び変更されるまでは、そのままの状態を保ちます。リジャスタは、他のリジャスタと温度係数を整合させることが可能です。また、同じく電気信号のみを使用することによって、回路中で使用されているリジャスタでアナログ回路に含まれる他の要素のオフセットや温度係数の変動を補償することができます。調整はすべて、低電圧/低電流で、パッケージングの前後いずれでも行うことができます。

このテクノロジを強化したものとして、MicrobridgeのeTCリジャスタがあります。これは、パッケージング後の温度コンディショニングのための、完全受動、完全アナログ、電気的制御による温度係数調整ソリューションを提供するものです。eTCリジャスタを使用すると、個々の抵抗の抵抗値と抵抗温度係数(TCR)を独立した目標値に調整することができます。これによって、温度関連の問題を制御するための、前例のない柔軟性が実現します。たとえば、アンプのオフセットやTCのオフセットを、アナログドメインで連続的に値を調整して補償することが可能です。調整はボード組立て後に電気的に行われるため、設計エンジニアは他のすべてのパラメータの変動や温度感受性が明らかになるのを待って、最終テスト時に累積的な影響を簡単にゼロにすることができます。

リジャスタは、公称製造値の少なくとも30%下までの範囲で調整可能です。

実験データ

以下の2つの実験では、リジャスタのみを使用した場合と、高利得計測アンプMAX4208の内蔵抵抗と組み合わせた場合で、利得について印象的な結果が示されました。

外付けリジャスタによる360倍の利得の提供

最初の実験(図2)では、REF端子をGNDに接続して、MAX4208を2系統電源動作(±2.5V)で使用しています。利得設定抵抗R1は、並列に接続した2個の1kΩのリジャスタで構成されています(RJ1 = 1kΩ||1kΩ = 500Ω)。利得設定抵抗R2は、直列に接続された2個の90kΩのリジャスタで構成されます(RJ2 = 90kΩ + 90kΩ = 180kΩ)。この設計によって、約361V/Vの利得値が提供されます。製造上の変動が原因で、実際に測定された利得値は350V/V.でした。2個のリジャスタには、SOPパッケージで提供される標準的な低TCR、デュアルリジャスタパッケージであるMBD903A (90kΩ × 2)およびMBD102A (1kΩ × 2)を使用しています(QFNでも提供されています)。

測定のために用意する機器は、以下の通りです。
  • 両方のリジャスタを収容し、リジャスタの装着を容易にするZIFソケット
  • MBK-408トリムキット
  • National InstrumentsのcDAQシャシーおよびNI-9205 ADC
  • Agilent 34420A 7&1/2桁ナノボルトメータ
  • 入力リファレンス電圧ソース、VINP = 4.118mV
  • ラップトップコンピュータ
Figure 2. MAX4208 configured with external rejustors provides a gain of 360V/V.
図2. 外付けリジャスタを使用して利得360V/Vに設定したMAX4208

調整の概念を立証するため、以下の手順によって回路の利得を正確に360V/Vに設定しました。
  1. 入力電圧オフセットを測定するため、MAX4208の入力を短絡させます。出力をAgilent 34420A電圧計で測定して、NI-9205で視覚化しました。図3に示す出力オフセット電圧から、入力オフセット電圧(VOS = VOUT/利得)は無視可能なほど小さく、数µV程度であることが立証されています。したがって、以下の測定において入力電圧オフセットの影響は無視可能な範囲であると考えることができます。

    Figure 3. The output-offset voltage of the MAX4208 test system.
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    (PDF、517kB)
    図3. MAX4208テストシステムの出力オフセット電圧

  2. ±4.118mVのリファレンス電圧(Agilent 34420Aで測定)をMAX4208の入力に印加します。目標の利得値である360V/Vの場合、期待される出力電圧は±1482.48mVになります。
    VOUT = VIN × Gain = ±4.118mV × 360 = ±1482.48mV
  3. 目標に合わせて両方のリジャスタを調整して(7%プリトリミング)、出力電圧を再度測定します。
下図のスクリーンショット(図4図5)から、利得誤差0.1%未満が達成されていることがわかります(出力電圧の1.5mVの偏差が、ほぼ0.1%に相当します)。

Figure 4. Deviation from the nominal output voltage of 1482.48mV.
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(PDF、492kB)
図4. 公称出力電圧1482.48mVからの偏差

Figure 5. Deviation from the nominal output voltage of -1482.48mV.
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(PDF、517kB)
図5. 公称出力電圧-1482.48mVからの偏差

この実験から、デバイスを調整可能な高利得の設定で使用し、そしてより高価な低許容誤差の抵抗(このレベルの性能に合わせるには0.1%未満である必要があります)の代わりに標準的なリジャスタを使用した場合、外付け部品によって計測アンプMAX4208の精度が劣化しないことが証明されています。さらに、リジャスタによって利得値が正確に希望の公称値になることが保証されます。

外付けリジャスタと抵抗による1000倍の利得の実現

第2の実験でも、同じようなテスト用セットアップと機器を使用して 利得が1000V/Vになるように計測アンプMAX4208を設定します。しかし、このテストではいくつか注目すべき違いがあります。
  • 入力リファレンス電圧ソースが、今回はVINP = 1.826mVである。
  • 利得抵抗R2が、75kΩの固定抵抗(0.1%)およびそれと直列に接続した標準的な低TCR 10kΩリジャスタMBD103で構成される。
  • 利得抵抗R1が、91kΩの固定抵抗(0.1%)およびそれと並列に接続した低TCR 1kΩリジャスタMBD102で構成される。
新しい回路を図6に示します。

Figure 6. MAX4208 with the combination of external rejustors and resistors to provide a gain of 1000V/V.
図6. 外付けリジャスタと抵抗の組合せを使用して利得1000V/Vに設定したMAX4208

ここでも、調整の概念を立証するため、以下の3つの手順によって回路の利得を正確に1000V/Vに設定しました。
  1. 利得1000V/Vにおける入力電圧オフセットおよびCMRR (コモンモード電圧VCM = 1.25V)の影響を測定するため、MAX4208の入力を短絡させます。図7から、出力電圧VOUTが小さいことがわかります。したがってCMRRと入力電圧オフセットの組合せによる影響は無視することができます。

    Figure 7. Data from the second experiment setup show a small output voltage and the negligible effects of CMRR and input voltage offset.
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    (PDF、491kB)
    図7. 第2の実験用セットアップによるデータから、出力電圧が小さく、CMRRと入力電圧オフセットの影響が無視可能であることがわかります。

  2. ±1.826mVのリファレンス電圧(Agilent 34420Aで測定)をMAX4208の入力に印加します。目標の利得値である1000V/Vの場合、期待される出力目標電圧は±1826mVになります。
  3. 目標に合わせて両方のリジャスタを調整して、出力電圧を再度測定します。
下図の2枚のスクリーンショット(図8図9)から、利得誤差0.1%未満が達成されていることがわかります(出力電圧の2mVの偏差が、ほぼ0.1%に相当します)。

Figure 8. Deviation from the nominal output voltage of 1826mV.
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(PDF、491kB)
図8. 公称出力電圧1826mVからの偏差

Figure 9. Deviation from the nominal output voltage of -1826mV.
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(PDF、518kB)
図9. 公称出力電圧-1826mVからの偏差

これらの実験では、標準的なリジャスタを抵抗と組み合わせて使用しました。このデータからも、リジャスタを使用する限り外付け部品によって計測アンプMAX4208の精度が劣化しないことが証明されています。固定抵抗の要素が存在するため、リジャスタの調整範囲は公称値の30%下までより狭くなります。しかし、リジャスタと抵抗を組み合わせることによって、温度範囲にわたるアンプの性能とデバイスの長期的安定性の両方が改善されます。これは、抵抗の要素(たとえば±20ppm/k)によって、相対的に高いリジャスタのTCR (たとえば±100ppm/k)の感度が低下するためです。

結論

アプリケーションによっては、高精度(超低電圧オフセットと利得誤差)と高利得が非常に重要であるため、計測アンプで非常に小さな信号を増幅する必要があります。多くの場合、利得は外付けの抵抗部品によって設定されます。しかし、リジャスタを使用すると、これらのアプリケーションにとって重要ないくつかのメリットが提供されます。リジャスタは正確な公称利得値に調整可能であるため、柔軟性が提供されます。また、リジャスタは低許容誤差の抵抗よりも低いコストで高精度を提供します。最後に、リジャスタは広い調整範囲を実現するために単体で使用することも、固定値の抵抗と組み合わせて使用することも可能です。後者の場合、温度範囲にわたる最良の性能と安定性が提供されます。



MicrobridgeはMicrobridge Technologies, Inc.の登録商標です。

RejustorはMicrobridge Technologies, Inc.の商標です。


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