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アプリケーションノート 4354

3.3VCC電源からのHS-CAN通信標準化の達成

筆者:Robert Regensburger

要約:チャージポンプは低電力、低電圧動作そして低コストの組合せが求められる電源のアプリケーションに最良の選択肢によくなります。このアプリケーションノートでは、3.3V入力-5V安定化出力チャージポンプのMAX683を使用してHS-CANトランシーバのMAX13041に供給する方法について説明します。また、このアプリケーションノートでは、電磁放射/耐性の影響についても検討します。

概要

高速CAN通信のISO 11898-2規格の準拠は、MAX13041のVCC電源が4.75V~5.25V (通常動作電圧範囲)1にある場合にのみ保証されます。すなわち、CAN通信が要求される場合は、5Vの電源範囲がCANトランシーバ電源用に使用可能である必要があります。

しかし、システムエンジニアリングでは、サブシステム側の電源要求がメイン電源範囲に適さないことがよくあります。そのような場合、使用可能な電源範囲が直接使えないことが多くあります。すなわち、3.3Vの単一電源しか使用することができない場合や、電池電圧を直接使用することですべて必要な電源をつくることができない場合などです。スペース不足により、最適な数の電源の組込みができない可能性があります。その他の場合では、特に、高電池電圧でのCAN通信を必要とするシステム(自動車のダブルバッテリ状態や24Vトラックシステムなど)では、電池電源から直接5Vを生成することは、放熱上の問題で使えない可能性があります。

電圧コンバータは求めに応じた電圧の値を作ることができ、チャージポンプは数多くの低電力、簡素性、および低コストの組合せが求められるアプリケーションにとって最良の選択肢となります。チャージポンプは、高価なインダクタや追加の半導体を必要としないため、使用が容易です。

チャージポンプの選択

トランシーバの電源

MAX13041のVCC端子は、ICが通常モードにあるときバス、電圧リファレンス、およびレシーバ段の間に適切な通信信号をつくるICに供給するために使用されます。

VI/O入力は、コントローラとトランシーバ間の正しい電圧レベルを取得するために、3.3V I/Oマイクロコントローラとのインタフェースを行います。またこの端子は、アプリケーションがそのようなコントローラと通信するとき、5Vレギュレータによって供給することもできます。

VBAT端子(通常は自動車バッテリ12Vに接続)は、超低自己消費ウェイクアップ検出回路に供給します。この端子は、MAX13041をCANメッセージ時にスリープモードからウェイクアップさせることができ、VBATに低電圧が検出されるとトランシーバを低電力モードに移行させます。

その他のすべての端子の詳細については、MAX13041のデータシート2を参照してください。

消費電流

CANバスは、2つの論理状態、リセッシブまたはドミナントの1つにすることができます(図1)。通常通信モードでは、MAX13041は、ドミナント状態では80mA、リセッシブ状態では10mAの最大VCC入力電流が必要です3。VI/OおよびVBATへの電流は無視することができます。

しかし、バスに障害がある場合、VCC消費電流は、特にCAN_Hバスラインがグランドに短絡した場合、大幅に増大します。トランシーバは短絡電流をIO(SC) = 95mAに制限します4。ただし、この場合は、チャージポンプ出力電流の容量を測定するほうが良い方法となります。

上記を考慮すると、CANトランシーバに適切な電力を供給するには、上述の耐圧を持つ5V出力電圧と95mA最小出力電流性能を備えたチャージポンプが必要となります。

図1. CANバスの論理状態
図1. CANバスの論理状態

3.3V入力-5V安定化出力チャージポンプ

数多くの従来型チャージポンプ回路が市場に出回っていますが、このアプリケーションノートでは、MAX683 3.3V入力-5V安定化出力チャージポンプに対象を絞って、電源範囲の問題を解決します。このデバイスは、2.7V~5.5Vの入力電圧で5V ±4%の安定化出力電圧を供給します。そのスイッチング周波数範囲は、最大2MHzまで調整可能なため、小型の外付けコンデンサで100mA出力電流の使用が可能です。

このデバイスは、スキップモードおよび一定周波数モードの2つの動作モードで動作することができます。スキップモード(アクティブローSKIP入力 = ロー)の場合、5Vを上回る出力電圧が検出されるとスイッチングがディセーブルされます。このデバイスは、出力電圧が降下するまでスイッチングサイクルをスキップします。このレギュレーション方式では、デバイスが連続的に切り替わらないため、動作電流を最小限に抑えます。一定周波数モード(アクティブローSKIP入力 = ハイ)の場合、チャージポンプは選択された周波数で連続的に動作します。このレギュレーション方式では、出力リップルを最小限に抑えます。デバイスが連続的に切り替わるため、出力ノイズは明確に定義された周波数成分を含み、回路は特定の出力リップル用の超小型の外付けコンデンサで可能です。しかし、一定周波数モードのほうがより大きい動作電流を必要とするため、軽負荷時ではスキップモードより効率が高くなりません。

MAX13041およびMAX683による3.3V回路例

図2の回路は、チャージポンプによるMAX13041への供給がいかに簡単であるかを示しています。MAX683は、CANトランシーバのVCC入力に単純に追加され(破線を参照)、必要な耐圧と出力電流の5V出力電圧を作ります。この構成は、回路の残り部分に、より低い電圧によって供給できます。この例では、チャージポンプ(IN)、マイクロコントローラ、およびトランシーバのVI/Oレベルトランスレータ電圧に供給するために、3.3Vの外部電源電圧が選択されています。チャージポンプのアクティブローSKIP入力は、ハイに固定され、このデバイスを一定周波数モードに設定します。スイッチング周波数はREXT抵抗器によって設定されます。入力/出力(CIN、COUT)の詳細なサイズ、フライングコンデンサ(CX)、および周波数設定抵抗器(REXT)は、MAX683のデータシート5に記載されています。

図2. MAX683チャージポンプを使ったMAX13041 CANトランシーバに供給する回路
図2. MAX683チャージポンプを使ったMAX13041 CANトランシーバに供給する回路

電磁環境適合性

電磁環境適合性(EMC)は、特にCANアプリケーションがスイッチング電圧レギュレータを使用して供給される場合、CANアプリケーションで解決しなくてはいけない点があります。CANシステムのワイヤハーネスは、CAN_HおよびCAN_L端子が車全体に流れ込むバスネットワークとのインタフェースであるため、特に大きな問題となります。適切に処理されないと、干渉波にぶつかったり、CAN電源からトランシーバを通じて、バス回線を通って、ハーネスの隣接ケーブルまで伝搬する干渉波が引き起されたりします。これらの干渉波は、システム内の他の制御ユニットの伝達不良や誤動作を引き起こす可能性があります。

この問題に関し、MAX683チャージポンプによって供給されたMAX13041のEMC特性と、標準5Vで供給されたMAX13041の特性と比較することにし、EMC干渉波に関してチャージポンプの影響を見ています。これに関連して、2つの分野、電磁環境耐性(EMI)と電磁放射(EME)について検討していきます。

耐性試験

ISO 11452規格は、BCI (バルク電流注入)、TEMセル(Transversal ElectroMagnetic-Cell)、ストリップライン、およびDPI (Direct Power Injection)を含む、RF妨害波に対する耐性試験のためのいくつかの方法について説明しています。

我々は、再現性が高いこと(明確に定義された試験ボードの使用による)と必要な試験作業量が比較的少ない理由から、DPI法を使用することにしています。DPI試験の原理は、バスラインに一定のAC電圧を変調または変調せずに注入し、トランシーバのRXD端子からの伝送データ信号の整合性をチェックすることです。この技法は、異なるメーカーのデザイン間の比較も簡素化し、さらに、CANトランシーバを試験する独立した研究所(IBEE [Ingenieur Buereo fuer industrielle Elektronik]など)によっても使用されています。

試験セットアップ

試験セットアップ(図3)は、定義されたPCB上に半田付けされた3つの同じトランシーバで構成され、うち1つがMAX683チャージポンプから給電されます。ノード1は、すべてのトランシーバのRx_出力ポートで受信され監視されるCANメッセージをシミュレートするビットパターン用のトランスミッタとして動作します。出力Rx1~Rx3、および入力Tx1のRFデカップリングには、1kΩの抵抗器が使用されます。各トランシーバICの電源ポートVCCとVBATには、1つのバッファセラミックコンデンサ(C = 100nF)が使用されます。ウェイクアップ端子の抵抗器の値は33kΩです。これらのデバイスは、ENとアクティブローSTBハイを結ぶことによって、通常モードに設定されます。ノード1のVCC電圧は、3.3Vを供給するMAX683チャージポンプ回路によって作られます。3.3V電源は、トランシーバノード1のVI/O電圧としても使用されていました。

ジャンパ抵抗器R1またはR2を選択することによって、チャージポンプはスキップモードと一定周波数モード(CFM)間を切り替えることができます。チャージポンプのスイッチング周波数は、59kΩのR3抵抗器によって2MHzに設定されます。チャージポンプの出力コンデンサC1は4.7µF、フライングコンデンサC2は220nF、および入力IN端子は470nFコンデンサで切り離されます。試験回路では、バス終端は60ΩのR4抵抗器を使用する中央終端によって実現されます。パラレルなRCコンビネーションR5/R6 = 120Ω、C3/C4 = 4.7nFによって、対称的なRFカップリング/デカップリングが実現されます。3.3V、5V、および12Vの外部電源は、フィルタリングネットワークによってフィルタされた標準電源によって提供されます。

図3. DPIおよび放射試験用の試験セットアップ
図3. DPIおよび放射試験用の試験セットアップ

試験手順

試験は、通常モードで動作するMAX13041 CANトランシーバを使用して実施されます。チャージポンプは、1回の試験走行は一定周波数モードで、もう1回の試験走行はスキップモードで動作します。1番目の試験走行は、標準VCC = 5V電源によって供給されたすべてのトランシーバを使用して実施されます。パターンジェネレータは、50%のデューティサイクルで方形波を作り、ノード1のTXD端子上の250kbpsのCAN信号(永続的なデータ循環0-1-0を持つ)をシミュレートします。RF入力(HF1)のHFジェネレータが、36dBmの電力に応じて、一定の周波数で振幅変調(AM) AC電圧をCANラインに注入し、妨害波をシミュレートします。

耐性を評価するために、ネットワーク内の3つすべてのトランシーバのRX信号は、オシロスコープを使用してTXDに送られた信号へのそれらの妨害波の影響下で比較されます。±0.9Vの最大許容電圧偏差と±0.2µsの最大許容時間偏差を持つ検証マスクが、TXD信号波形にオーバーレイされます。

エラー判定基準が正(すなわち、トランシーバのRX信号の1つが検証マスクウィンドウを超える)の場合、注入するRF電力は0.2dBmだけ下げられ、エラー判定基準が失敗になるまで、同じ試験(特定の周波数ステップで)が繰り返されます。現在の電力値が報告され、次の周波数ステップが調整されます。この試験は10MHz~100MHzの周波数範囲で実施されます。

DPI試験結果

図4は、 VCC上の標準5V電源で供給されるMAX13041 (青)、一定周波数モードで動作するチャージポンプで供給されるMAX13041 (赤)、およびスキップモードで動作するチャージポンプ(緑)の試験結果の各曲線を示しています。X軸は、周波数範囲を示し、Y軸は誤差なしで注入された最大電力を示します。緑と赤の各線が青の線(チャージポンプなしのMAX13041)とほぼ同じであるため、回路のEMI動作がチャージポンプのEMI感受性ではなくCANトランシーバのEMI感受性によって左右されると見ることができます。したがって、MAX683チャージポンプでMAX13041 CANトランシーバに給電することは、回路のEMI動作に有意味に影響しません。

図4. DPI試験結果
図4. DPI試験結果

放射試験

放射試験は、パワーインジェクタ(HFジェネレータ)がスペクトラムアナライザによって置き換えられる点を除き、DPI試験と同じ試験ボードと試験セットアップ上で実施されます。この場合も、試験は通常モードで動作するCANトランシーバを使用して実施されます。チャージポンプは、1回の試験走行はスキップ動作に設定され、もう1回の試験走行は一定周波数モードに設定されます。1番目の試験走行は、標準VCC = 5V電源によって供給されたすべてのトランシーバを使用して実施されます。CAN TXD入力上に印加された方形波(250kbpsの送信ビットストリームをシミュレート)が維持され、CANライン上の放射が、100kHz~1GHzの周波数範囲でスペクトラムアナライザによって測定されて報告されます。DSOは必要ありません(図3)。

放射試験の結果

図5は、VCC上の標準5V電源によって供給されるMAX13041 (青)、および一定周波数モードで動作するMAX683チャージポンプ動作によって供給されるMAX13041 (緑)のEME曲線を示しています。図6は、標準5V電源のMAX13041 (紫)を、スキップモードで動作するMAX683チャージポンプによって供給されるMAX13041 (赤)と比較しています。X軸は、周波数範囲を示し、Y軸は妨害波のレベルを示します。

この場合もまた、緑と赤の各線(チャージポンプによって供給される1つのトランシーバ)が標準5V電源を持つMAX13041の各線(青と紫)とほぼ同じであるため、回路の放射動作は、チャージポンプの放射環境適合性ではなく、CANトランシーバの放射環境適合性に左右されると見ることができます。これらの試験結果は、システムの全体的なEMC動作に有意味な影響を与えずに、チャージポンプを使用してCANトランシーバに供給することが可能であることを示しています。

図5. EME曲線:標準5Vで給電されるMAX13041 (青)、および一定周波数モードで動作するMAX683チャージポンプによって供給されるMAX13041 (緑)
図5. EME曲線:標準5Vで給電されるMAX13041 (青)、および一定周波数モードで動作するMAX683チャージポンプによって供給されるMAX13041 (緑)

図6. EME曲線:標準5Vで給電されるMAX13041(紫)とスキップモードのMAX683チャージポンプ動作によって供給されるMAX13041(緑)
図6. EME曲線:標準5Vで給電されるMAX13041 (紫)とスキップモードのMAX683チャージポンプ動作によって供給されるMAX13041 (緑)

まとめ

CANアプリケーションでは、電磁環境適合性を達成することは、特にスイッチング電圧レギュレータ(チャージポンプ)によって供給される場合は難しい問題となる可能性があります。しかし、このアプリケーションノートでは、この回路のEMC動作がチャージポンプのEMCではなく、CANトランシーバのEMCによって左右されることを検証しています。

MAX683チャージポンプを使用してMAX13041に供給する方法は、低電力かつ低電圧動作でしかも低コストが要求されるアプリケーション用として、5Vの電源範囲を持たないシステム設計者にとって1つの利用しやすい選択肢となります。



参考文献
  1. ISO 11898-2規格、「Road vehicles―Controller area network (CAN)」、初版(2003-12-01)
  2. MAX13041のデータシート
  3. 同上
  4. 同上
  5. MAX683のデータシート


関連製品  APP 4354: Nov 03, 2009
MAX13041 低電力管理機能およびWake on CANを備えた、±80Vフォルト保護、高速CANトランシーバ フルデータシート
(PDF, 208kB)
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