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| アプリケーションノート 791
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MAX2360/61トランスミッタIC用の受動型差動IFフィルタ |
要約:差動トポロジを使用してMAX236X集積回路(IC)を搭載したアプリケーションのための受動送信IFフィルタの設計について説明します。サンプル設計では、600のソースインピーダンスと400Ωの終端を使用しています。中心周波数は130MHzで、帯域幅は16MHzです。所望の阻止域減衰量は、90MHzと200MHzにて-25dBです。バイアスの経路拘束により、2つのインダクタがプルアップ機能を提供できるようにしています。シミュレーションの結果を参考資料とともに示します。
追加情報
はじめに
MAX2360やMAX2361などの差動CDMA (Code Division Multiple Access:符号分割多重アクセス)トランスミッタICを用いたIF (中間周波数)フィルタの設計と実装には、多くの混乱が付きまとっています。フィルタの教科書には、シングルエンドフィルタの例が次から次へと満載されていますが、バランスフィルタの実装は設計者の想像に任されています。このアプリケーションノートでは、MAX2360用の130MHz差動IFフィルタのサンプル設計について説明し、また最も効率のよい回路動作を得るためには、どのようにしてIFの入出力にフィルタを結合させればよいかを示します。シミュレーションの結果では、16MHzの帯域幅、9.8dBの損失、及び25dBの減衰量(100MHzと183MHzにて)が得られています。
MAX2360は、高集積のトランスミッタICであり、IF周波数シンセサイザ、IF直交変調器、イメージ除去RFアップコンバータ、IFとRFの可変利得アンプ、パワーアンプ(PA)ドライバ、RF周波数シンセサイザ、及びプロセッサ制御のためのシリアルバスインタフェースで構成されています。このICは本来、IS-95のCDMAセルラ電話用アプリケーションを対象としたものであり、48ピンのTQFPという小型パッケージでこのアプリケーションのニーズを満たしていました。最新版の製品(たとえばMAX2361)は、QFNパッケージを採用しています。このアプリケーションノートで取り組んだ問題点はすべて、新製品にも適用されます(新製品にも差動IFインタフェースが組み込まれています)。
図1のIFインタフェースの詳細図では、IFの出力と入力を回路図で表しています。

図1. MAX2360 IFフィルタのインタフェースと平衡信号の経路
出力と入力のインピーダンスは、内部抵抗(出力ピンでの600Ωと入力ピンでの400Ω)で設定されています。これらのインピーダンスのレベルは、~3Vで電力供給されるバイポーラアンプの性能を最適化するようなインピーダンスとなります。入力インピーダンスと出力インピーダンスが1kΩであるSAW (Surface Acoustic Wave:表面弾性波)フィルタを利用しているユーザは、マッチングネットワークを設計することで適正なフィルタ性能と電力伝達が得られます。最近のCDMAシステムでは、トランスミッタのIF経路にSAWフィルタを使用しなくなっています。部品に追加するSAWフィルタのコストが高く、トランスミッタのスペクトル品質を考えると過剰設計になるからです。部品のコストを削減するため、新しいCDMA設計では、SAWフィルタの代わりに受動LC設計を採用しており、このため、差動LCフィルタの設計が必要となります。
シングルエンドバンドパスフィルタの設計例
IFフィルタの目標仕様は、以下のとおりです。
中心周波数f0 = 130MHz
3dB帯域幅fc = 16MHz
インピーダンスR0 = 500Ω
バターワース応答
阻止域減衰量:~25dB (90MHz及び200MHzにて)
設計手順
フィルタの次数を決める必要があります。これを求めるには、ハイサイドとローサイドの両方のケースについて、次のように中心周波数と帯域幅を基準として阻止域周波数を正規化します。
ローサイド = 2 × (130MHz - 90MHz)/16MHz = 5.0
ハイサイド = 2 × (200MHz - 130MHz)/16MHz = 8.75
標準のバターワース損失グラフで、正規化したこれらの値を使用して必要なフィルタの次数を推測します。ハイサイドとローサイドの両方の周波数を考慮して、最も厳しい制限値を求めます。ここで対象とした例では、ローサイドの制限値が5.0であり、これは、90MHzで25dBの減衰量を確保するためには次数2のバターワースフィルタが必要であることを示しています。バターワースの正規化された素子の値の表を調べると、コンデンサが1.414ファラッドでインダクタが1.414ヘンリーであることがわかります。図2は、2素子の正規化ローパスフィルタを示しています。

図2. バターワースN = 2の正規化ローパスフィルタ
ここで、このローパスフィルタをバンドパストポロジに変換して500Ωのインピーダンスに変更する必要があります(注:この例では簡単にするため、600のソースインピーダンスと400Ωのフィルタ終端の間の中間値である500Ωのインピーダンスを選択しました。この不一致により小さな誤差が生じますが、このアプリケーションノートでは無視しています)。
変換を完了するためには、フィルタの負荷Qを計算する必要があります。
QL = 130MHz/16MHz = 8.125
設計過程のこの時点では、実際の部品の値の問題について検討する必要があります。これを実行しないと、不適切なトポロジが選択されてしまうおそれがあります。経験に基づいて、インピーダンスレベル、中心周波数、及び図3に示すトポロジを選択しました。このトポロジでは、2つの並列共振LCタンク回路が直列コンデンサを通じて結合されています。またこのトポロジはほとんどインダクタを使用していないので、平衡動作への変換が容易です。

図3. バンドパスフィルタのトポロジ
Whiteが挙げた参考資料には有用な表(7.2)が含まれており、フィルタのトポロジ、負荷Q、中心周波数、及びインピーダンスレベルに基づいて構築できるフィルタについてのヒントが記載されています。また一部の最新のフィルタ設計ソフトウェアパッケージにも同様の情報が収録されており、フィルタ設計を始めたばかりの設計者にとっては非常に価値ある情報となります。
計算すべき最初の素子はカップリングコンデンサC2です。
R0は、最終フィルタの特性インピーダンスです(単位:Ω)。
QLは、フィルタの負荷Qです。
f0は、フィルタの中心周波数です(単位:Hz)。
fcは、フィルタの3dB帯域幅です(単位:Hz)。
図4の回路図は、インピーダンスと周波数を調整した後の、フィルタ設計の現時点での状態を示しています。

図4. 130MHzに調整したシングルエンドのバンドパスフィルタ
フィルタをシミュレートし、設計過程での計算誤りや見落としを見つけるようにすることをお勧めします。ここでは、一般的なSPICEをベースにしたシミュレータを使用して設計を確認しました。挿入損失、帯域幅、及び形状比は、インダクタQ (50)を用いてシミュレートしました。応答結果は、ほぼ所望の値を示しています。
フィルタ設計の最後の段階では、MAX2360用にトポロジを調整する必要があります。このアプリケーションでは、次の2つの要件を満足しなければなりません。
1) IF出力ピンから+DC電源までのDC経路が存在すること。
2) フィルタは、両端で差動(平衡)インピーダンスを提供すること。
必要なDC経路は、インダクタを2つのインダクタ(それぞれが~26.6nH)に分割することで確保できます。差動動作への変換は簡単に達成できます。フィルタはすでに正しい周波数とインピーダンスレベルに調整されています。あとはフィルタの「グランド」を変換し、2つの信号経路がグランドに関して対称となるようにするだけです。これを行うには、図5に示すように2つのタンク回路の間のグランド経路であった部分に別のコンデンサを追加して、C2のミラーイメージとなるようにします。追加するコンデンサの値は、各タンク回路の共振周波数がシングルエンド設計と同じであるということがわかれば求めることができます。この例では、その周波数は130MHzです。シングルエンドタンクの共振は、C1、C2、及びL1で設定しています。差動の最終構成では、共振はL1、C1、及び直列の2つのコンデンサC2の作用で設定されます。このモデルに基づくと、差動モードフィルタのカップリングコンデンサは、シングルエンドトポロジで使用する値の単純に2倍になります。多くのフィルタのテキストではこの話題を省略しています。ここでは、試行錯誤的な形態でのみこれを示しています。シミュレータを数分間使えば、このシングルエンドフィルタを差動モードに変換するのに、シミュレータが実際に有効な方法であることがわかるでしょう。果敢な設計者であれば、このフィルタトポロジの方程式を記述して変換を証明することをお勧めします。

図5. シミュレーションに使った130MHz差動バンドパスフィルタ(入力インダクタを分割し有限Qを付加)
最終のフィルタトポロジを図5に示します。入力側のインダクタが分割されていること、また平衡型の構成であることがわかります。図5の回路は、Q = 50のインダクタでシミュレートしましたが、ここでは各インダクタに直列の小さな抵抗を用いてモデル化しています。
{注:シミュレータは、参照用の識別名を割り当てますが、これらは、このアプリケーションノートに示した実際の回路図の名称とは異なることに注意してください。}

図6. フィルタの出力振幅(dB)対周波数のシミュレーション結果
図6は、出力の掃引振幅応答のシミュレーション結果を示しています。挿入損失は9.8dBで、3dB帯域幅は~16MHzです。中心周波数は正確に130MHzです。応答は、~100MHzと183MHzにて25dB未満です。設計目標の帯域幅を16MHz未満に狭めれば、フィルタ形状の若干の改善が可能であると思われます。ただし、部品の選択がはるかに重要となり、所望のIF通過帯域が減衰しないようにするには、インダクタとコンデンサの耐性と安定性の向上が必須となります。より狭い3dB帯域幅を必要とする場合には、挿入損失を適度に保つためインダクタのQを増大することになり、フィルタをわずかに修正する設計手法(いわゆる「予歪」)を利用する必要があります。狭帯域幅は、送信信号の群遅延歪みも悪化させることになります。フィルタの帯域幅をできるだけ広く保つ方がより簡単であり、この場合でも阻止域での要求衰量を満足することができます。
設計を完了するには、最後にフィルタをMAX2360トランスミッタICに組み込む必要があります。回路図の最終部分を下図7に示します。回路基板の浮遊容量を考慮していないため、この例では、いくらかのその他の作業が必要となります。フィルタの入出力端での浮遊容量は、C1の値を低減することで補償することができます。C1の調整は、インダクタの自己共振周波数を補償する方法にもなりますが、値が100nH未満の、130MHz動作用に設計されたフィルタにはほとんど効果はありません。入力と出力間の浮遊結合は、フィルタの両側でC2の値を低減することで補償することができます。

図7. フィルタのMAX2360への組み込み
参考資料
- White, Donald R. J., A Handbook on Electrical Filters (Synthesis, Design and Applications), Don White Consultants, Inc., Gainesville, Virginia, 1980.
- Zverev, Anatol I., Handbook of Filter Synthesis, John Wiley & Sons, Inc., New York, 1967.
| 関連製品 | |
APP 791: Jul 15, 2003
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